ヤクルトの高津新監督(左)と今季までチームを指揮した小川監督(右) (c)朝日新聞社
ヤクルトの高津新監督(左)と今季までチームを指揮した小川監督(右) (c)朝日新聞社

 9月28日、神宮球場──。ヤクルトの2019年シーズン最終戦は、小川淳司監督(62歳)のラストゲームでもあった。監督代行時代も含め、2度の任期で計7シーズンにわたって指揮を執った小川監督にとって2度目の“ラストゲーム”。それは前回とはかなり様相を異にするものだった。

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 前回、2014年の最終戦はDeNAに逆転負け。試合後のセレモニーであいさつに立った小川監督は、途中で感極まって言葉に詰まり、涙を浮かべた。だが、今年は巨人を相手に太田賢吾のサヨナラ打で勝利を収め、小川監督も前回と比べ冷静にあいさつを終えた。

 ただし、その胸の内は5年前と変わっていなかった。この日の試合前、小川監督に「監督としての一番の思い出」を聞いてみると──。

「一番の思い出かぁ……16連敗かな。強烈だったからね。まあ、今年は16連敗がすべてになっちゃったから」

 監督復帰1年目の昨シーズンは、その前年の最下位から一気に2位に躍進。大きな期待を受けてスタートした今シーズンは4月に首位に立ちながら、5月半ばからセ・リーグ記録に並ぶ16連敗を喫して最下位に転落すると、そこから這い上がることはなかった。

「でも、それが(監督としての)力ですから、やむをないです」という小川監督に「では良い思い出は?」と尋ねてみると、返ってきたのは「(前回監督時の)2011年かな。あの時が優勝に一番近かったからね」との答え。ところが、それも話しているうちにトーンが変わってきた。

「あの時に優勝を逃したっていうのが一番ですよね。悔しさと申し訳なさと……。あの年は(東日本大震災の影響で)開幕が遅かったから、10月5日まで1位だったと思うんだけど、そこから中日にひっくり返されたのがすべてだから、悔しい思いはね……。その後のCS(クライマックスシリーズ)も(中日に)負けちゃったんで、そういう悔しさっていうのはずっと残ってます」

 悔しい──。その言葉を、試合後のセレモニーでも2度にわたって口にしたように、今回も無念の思いを抱えてグラウンドを去る。3回のAクラス入りは、球団史上では野村克也監督(5回)、若松勉監督(4回)に次いで3人目。一方で3度の最下位は、監督としては球団史上最多となる。それでも前回と同様、“ラストイヤー”に明日への光をともしていった。

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