当時の打撃は「当たればホームラン」という大雑把なレベルで、2年夏の甲子園では、早稲田実・斎藤佑樹(現日本ハム)の巧さに翻弄されてしまったが、西谷監督は「ウサギが本気になったら違う」と、打者としても成功することを確信していた。

 その結果、「スイッチが入った」中田は、「みんなに応援してもらえるスケールの大きな選手になってほしい」とプロ入りに際しての恩師の願いを見事実現している。

 また、中田の1年後輩にあたる浅村栄斗(楽天)も、「甲子園で活躍しないとプロは厳しい」と西谷監督から釘を刺されたことに奮起し、08年夏の甲子園で打率5割5分2厘、2本塁打と大活躍。日本一を手土産に同年のドラフト西武に3位指名され、夢を実現した。プロ入りという目標に対しても、恩師の目は確かだった。

 一方、彼らとは対照的に、プロ入り後、恩師の評価と異なる起用法が裏目に出たと言えそうなのが藤浪だ。

 阪神入団直後、西谷監督は「いきなり1軍というのは厳しいと思います。(即戦力という声もあるが)それはみなさんのリップサービスでは。もちろん藤浪がダメというわけではありません。プロはそんなに甘くない、ということです。大学を出ていきなりでも難しいわけですから、そう簡単にいくものでもないです」(2013年1月12日・東京スポーツ)と開幕1軍を時期尚早と見ていた。

 そして、プロでの課題として、「体もまだまだですから、まず体づくりをしないといけない」「やはり投球フォームですね。いい時はいいんですが、まだ安定してないんです。それをある程度安定させて投げられるようにならないと……」と体とフォームの2点を不安視していた。

 周知のとおり、藤浪はプロ1年目の開幕第3戦、ヤクルト戦(神宮)でプロ初先発初登板をはたし、3年連続二桁勝利と即戦力の期待に応えたかに見えたが、4年目以降は、制球難で自滅するなど安定感を欠き、現在も苦闘の日々が続いている。

 今改めて前出の西谷監督のコメントを読み返すと、やはり「的確な評価だった」の思いを強くさせられる。

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根尾ら昨年プロ入りした選手の評価は?