初戦で奥川と投げ合い、惜しくも0対1で敗れたものの、優勝候補を相手に最後まで見事なピッチングを見せた。少し軸足の右ひざが折れるのが早く、左右に体も振れるため、あまりバランスが良いとは言えないフォームだが、長いリーチを柔らかく使える腕の振りが長所。少し変則なモーションで球持ちが長いため、打者はタイミングが取りづらい。

 そして最も良いのは変化球で鋭く腕を振ることができる点だ。星稜戦でもストレートは最速143キロをマークしているように一定の速さがあるが、決してそれに頼り過ぎず110キロ台のカーブとチェンジアップ、120キロ台のスライダーを丁寧に低めに集めるピッチングは安定感十分だった。183cm、71kgとまだまだ細身なだけに、大学でしっかり体作りが進めば、さらなるスケールアップが期待できるだろう。

 投手と野手の両面で高いセンスを感じたのが岡田佑斗(宇部鴻城)だ。山口大会から背番号は8で、今大会初戦の宇和島東戦では1番、投手として先発。13安打を浴びながら12三振を奪い、要所を締めて3失点完投勝利をおさめた。ストレートの最速は135キロと平凡だったが、下半身主導のバランスの良いフォームで縦に腕が振れ、ボールの角度は申し分ない。そして今のところ、投手以上に野手として可能性を感じる。少しヘッドが中に入るものの、トップの形が安定しており、内からスムーズに振り出せるスイングの軌道が素晴らしい。

 第3打席では打った瞬間に分かるホームラン、第4打席ではライトオーバーのツーベースを放つなど3安打2打点の大活躍だった。投手で出場していたこともあって走塁は少し流しているように見えたが、ストライドの長いランニングも目立った。俊足強打の外野手として大成する雰囲気は十分に感じる。

 野手では西川晋太郎(智弁和歌山)、松浦佑星(富島)、坂下翔馬(智弁学園)の三人のショートを紹介したい。

 西川の持ち味はその堅実な守備だ。2回戦の明徳義塾戦では一つ悪送球はあったものの、グラブさばきと球際の強さなど、総合的な守備力では今大会ナンバーワンである。素早く動きながら正確なプレーができるというのは高校生離れしている。大学、社会人であればすぐに使えるレベルだろう。

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松浦、坂下のウリは?