能登嵩都(旭川大高)、岡田佑斗(宇部鴻城)、林優樹(近江) (c)朝日新聞社
能登嵩都(旭川大高)、岡田佑斗(宇部鴻城)、林優樹(近江) (c)朝日新聞社

 熱戦が続いている夏の甲子園ドラフト候補では目玉と見られている奥川恭伸(星稜)が1回戦で最速153キロをマークしてわずか94球で3安打完封、2回戦でもリリーフで登板して最速154キロをマークするなど前評判通りの素晴らしいピッチングを見せている。

 一方で奥川以外には上位指名確実と言われるような選手は不在というのがもっぱらの評判だが、大学や社会人を経由してプロ入りを狙えるような選手は少なくなかった。今回はそんな将来のドラフト候補になりそうな選手たちを紹介したいと思う。

 投手で圧倒的な存在感を見せたのは林優樹(近江)だ。初戦で東海大相模(神奈川)を相手に6失点を喫して敗退したが、自責点はわずかに1と持ち味は存分に発揮した。林が東海大相模戦でマークしたストレートの最速は131キロであり、これは今大会に登板した投手の中でも下から数えた方が早い数字である。しかしこの130キロ程度のストレートが速く見えるというのが林の真骨頂だ。

 その秘密はフォームにある。右足を高く上げ、そこから少しクロス気味にステップし、さらに体の近くで腕を振ることができるため、打者からはボールの出所がギリギリまで見えないのだ。ブレーキ抜群のチェンジアップがクローズアップされることが多いが、他の変化球も一級品。東海大相模の強力打線を相手にも3回までは33球でノーヒットに抑え込んだが、投じたチェンジアップはわずかに2球だった。

 100キロ程度の緩く大きなカーブで打者の目線をそらし、またストレートと同じ軌道から打者の手元で変化するスライダーも有効に使うことができる。東海大相模に許した6安打のうち、完璧にとらえられたような打球はほとんどなかった。卒業後は社会人入りが濃厚と報道されているが、ストレートのスピードが140キロ程度までアップしてくれば、3年後にはプロ入りの可能性も十分にあるだろう。

 投手でもう一人強く印象に残ったのが能登嵩都(旭川大高)だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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投打でセンスの高い岡田佑斗