兵庫県獣医師会小動物臨床部会の災害・感染症対策委員長も務める杉村さんは、18年9月、県獣医師会として、西日本豪雨(7月に発生)の際に岡山県総社市や倉敷市が開設したペットとの同伴避難所を視察した。倉敷市が、大きな被害が出た真備町から南、山間部にある小学校の体育館に開設した同伴避難所には、犬やを連れた約10世帯が避難していた。

 エアコンが作動している避難所のスペースはカーテンで仕切られ、ペットはケージに入れるか、リードにつなぐかして生活していた。ペットフードやペットシーツは市から提供。Wi-Fiが利用でき、市からのお知らせなどが掲示されているため、避難者らは「車中泊の時は、情報がなかなか得られなかったが、多くの情報が手に入り、ありがたい」などと話していたという。

 杉村さんは、避難所が非常に静かなことに驚いた。「吠えたりして、周りの方に迷惑をかけているワンちゃんがいてもおかしくないと思っていました。避難されている方々は、(隣接する)総社市の体育施設から、市役所の西庁舎に開設された同伴避難所、そして倉敷市の避難所へ移ってこられていました。普段から、ペットとの関係ができていた方々だったのですね」

 そこで、杉村さんが飼い主に求めるのが、ペットの「社会化」だ。災害に備えて、普段から薬や迷子札の準備、ペットへのマイクロチップの埋め込み、ワクチン接種などをすることも重要だが、「大事に飼っているペットが、突然、他の飼い主やペットがいる場所に入った時に落ち着いて行動ができるよう、社会化、人や他の動物に慣れさせておくことが大切です」

 さらに杉村さんは言う。「ペットの社会化が、行政の取り組みより先行してほしいぐらいです。行政まかせではなく、ペットも一緒に避難できるように、普段から防災を意識した暮らしをしておかないと、突然の災害に対応できない。普段の生活の延長として、同伴避難ができるような飼い方をしてほしい。それは、飼い主さんにとっても、きちんとした飼い方を考えるきっかけになると思います」

 また、避難所での生活が長引きそうな場合は、親せきや友人などに預かってもらった方が、飼い主とペット、双方にとってよいケースがほとんどだという。このため、「いざという時にペットを預かってもらったり、情報交換したりなどの助け合いができるように、普段から飼い主仲間や親せき、友人などと良好な関係を築くことも大切」と指摘する。

 これは、何もペットを飼っている人に限らないだろう。災害にどう備えるかを、普段から意識して生活することの必要性を改めて感じた。(ライター・南文枝)