例えば、吉本さんは劇場を持っていたり、テレビ制作もしているから、そこで仕事をもらうことができたり、ほかの事務所よりもチャンスが多いっていうメリットもある。ライバルが多いから頑張る人もいるかもしれない。だから、その方針が一概にダメとは言えないんですよね。飲料水メーカーだったら、大手から個人経営のところまでいろんな会社があって、それぞれの収益の仕組みとか販売方法とか方針が違うからいろんな味が楽しめるように、芸能界という同じジャンルと言えど一つの会社じゃありません。だからこその良い面もあるわけです。

 直営業を認める会社がある理由はほかにもありますよ。例えば10万円で飲み屋でネタをやる仕事があったとして、事務所を通すと半分の5万は事務所に持っていかれ、コンビだと2人分の税金が取られて残るのは4万円。分けると2万円ずつしか入らないんです。だから会社によっては、「10万円ぐらいなら小遣いとしてもらいな」って言うところも実際にあるんです。

 そういう仕組みを知らずに、世間の人が「闇営業というヤクザな仕事を会社に黙ってやっている、芸能人にはそういう文化がある」と勘違いしてしまっているのは悔しい。芸能界の闇とかそういう話がみなさん好きなんでしょうけど……。

 そんな場所だと知って行ったというなら大問題だけど、頼まれて行った本人たちは知らなかったわけで、先輩とか知り合いを助けるっていう気持ちがあったかもしれないし、そこはちょっと可愛そうな面もあるんですよね。法を犯すような極悪非道なことをやったわけじゃないし、そこは冷静に判断したほうがいい気がします。

 それとは別にスリムクラブと2700の件がありますが、仲介したものまね芸人が会見で「知らなかった」と証言していたし、真栄田(賢)も電話で「本当に知らなかった」と僕に言っていました。「気づかなかったのか? 『親分』とか『かしら』とかベタな言葉を使っていたり、入れ墨があったりしなかったのか」って聞いたら、「一切ありませんでした」と。ネタをやって座って笑かして帰ったら、後になって自分が知らない事実が出てきたということらしい。直営業がグレーゾーンだったなら、そこは考えてあげてもいいのかなとも思います。

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暴力団を見極めるのが難しくなったという問題