一方紀平は、コロラドでの合宿で4回転の精度を上げてきた。「跳ぼうと思った時、一度目か二度目に跳べることが結構多くなってきた。試合でもすぐに跳ばなくてはいけないので、初めに跳べるということはいい傾向なんじゃないかな」と手応えを得ているようだ。今重点的に取り組んでいるのは4回転サルコウで、プログラムに入れるサルコウの安定を目指しつつ、4回転トウループも練習していく方針だという。

 このアイスショーには、ジュニアで圧倒的な成績を残して来季シニアに参戦するロシア女子3名も出演している。そのうちアレクサンドラ・トルソワとアンナ・シェルバコワは4回転も跳ぶ選手だが、紀平は「4回転ジャンプをしっかり今回の期間で見て勉強して、私もシーズンまでにいいなと思ったところを取り入れて、もっといいジャンプを跳べたらいい」と貪欲な姿勢を見せている。

 ロシアの若い3人の堂々とした演技には自信があふれていたが、坂本と紀平も前を見つめて進んでいる。シニアのトップ選手としての経験に加え、たゆまぬ向上心が激戦の来季を戦う二人の武器になるだろう。(文・沢田聡子)

●プロフィール
沢田聡子
1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」