「コスプレ姿で接客するのはアルバイトで採用した方々です。プライベートのコスプレ経験がある人がほとんどで、衣装は自前で好きなものを持ち込んでもらっています」(澤田さん)

 アルバイトは学生ら16~23歳が中心だ。特定のコスプレイヤーを目当てに来店するファンも多いという。

 20代の紅音(あかね)さんはセーラームーンのコスプレをしていた。頭からつま先まで本格的なコスプレだが、全身の衣装はネット通販などで意外にも1万円前後でそろえられる安さだ。アニメと同様にスカートが極端に短く、正直目のやり場に困ってしまった。筆者同様にヲタ芸は未経験だというが、「研修、一緒に頑張りましょう」と励ましあった。

 ヲタ芸とは、アイドルのコンサートなどで、ファンが曲を盛り上げるために行う独特な踊りやかけ声のことだ。聞けば、ヲタ芸には曲ごとに数えきれないほどのパターンがあるそうだ。覚えられるのか不安になったが、いくつかの基本的な型を覚えれば、どの曲でもある程度は対応できるという。5人のアルバイト(うち2人がヲタ芸未経験)とともに、まずは踊ってみることになった。

 店長から最初に教わったのは、「サンダースネイク」という技。名前からして激しさを感じさせる。まず両手を前に向かって縦回転させながら繰り返し交差させ、両腕を体の左から右に持ってくる。その後両腕をまっすぐ上に伸ばして体の前で大きく円を描くように振り回す。とにかく腕をめちゃくちゃに振り回すのだ。

 そしてそのまま冒頭の「ロマンス」へと続く。技名のとおり「ローマーンース!」と声を出しながら激しく体を動かす。それぞれ曲のサビを盛り上げる重要な技だ。

 店長や先輩スタッフの動きをまねながら10分ほど基本動作を繰り返す。高校時代、真夏の炎天下で何時間も走らされた筆者だが、気づけば息が上がり汗だくに。激しい運動だが、やっていると意外と楽しい。

「それでは、曲に合わせてみましょうか」

次のページ
ヲタ芸をされる側の気分とは…?