そのときのことを福井弁護士はこう語る。

「12年の法改正で、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金という刑罰が付与されました。このときは今回の著作権法改正騒ぎとも比較にならないくらいの不意打ちで、ネット上は大炎上しました。たとえば未成年が、違法にアップロードされたサイトなのか、正規版なのか区別がつかない状態でダウンロードしても、処罰の対象になるのか、そもそも違法アップロードする人のほうが悪いのに、この改正は一般ユーザーの行為を犯罪にする点で批判が集まったのです。その後、実際に導入されてみると摘発例はゼロ。違法と知りながらダウンロードしたユーザーを特定して証拠を固め、摘発することなんてあまりやりません。ただ、権利者側は罰則規定ができたことによって、一定の抑止力はあったと受け止めています」

 ところが、昨年12月に文化庁が発表した中間まとめでは、現行の音楽と映像に加え、写真、漫画、イラスト、文書などの著作物全般に広げて違法化、罰則化する内容が記されていたことから、状況は一変する。

 ネット上には、無数の著作権侵害が横行している。本誌が幾度となく写真の無断使用に関する特集を行い、注意喚起をしてきたように、元凶が著作権侵害者であることには変わりがない。

 ところが、特に悪気もなくツイッターのアイコンをお気に入りのアニメキャラクターにしている、権利者の許可を得ずに写真やイラストを個人のブログやSNSに転載する、といったケースは頻繁に目にする。もしも、こうしたものを見た人が、著作権侵害物が一部でも含まれるとわかっていながらダウンロードや、スクリーンショット撮影を行うと、すべて違法になる――というのが先の法案の解釈だった。

 ネット上で情報収集し、スマホの画面に表示したサイトなどをスクリーンショットで保存することは、日々あたりまえのように行われている。それゆえに影響が極めて大きく、「やりすぎだ」「ネット利用を萎縮させる」などと世論は大きく反対に傾き、被害者であるはずの漫画家などの著作者までもが異論を唱える事態となった。

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