日産自動車前会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)の特別背任事件で、弁護団は4月9日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で記者会見を開き、ゴーン元会長のメッセージを収録した映像を公開した。弁護人の弘中惇一郎弁護士によると、動画は4日の再逮捕の前に撮影したという。

 動画公開に先立ち、弘中弁護士は、「今回のビデオはもともと4月中旬に予定していたゴーン容疑者の会見が検察の妨害によってできなくなることを懸念して準備した。会見が実現できなくなったことでゴーン容疑者と相談して公開することにした」と話した。

 その動画(約7分間)の全文を掲載する。(※前編から続く

* * *
 真相や事実が明らかになることを願っています。

 しかし、結局のところ、この間、私は自分の事件にだけ苦しめられてきたわけではありません。

 一体誰が、日産の舵取りをしてくれるのか、ブランドを守っているのか、企業価値を守っているのか、株主の利益を守っているのか。

 株価の下落と業績の低下を目にしながらも、幹部たちは、あれはしない、これはしないと言って、それと同時に、今後何をするのかも言わず、未来のビジョンもなく、日産の業績を向上させるためのビジョンもなく、アライアンスの将来をより強化するためのビジョンもなく、自らを誇っている現経営幹部たち。

 それを見ることは非常に悲しいことです。私にとっては本当にうんざりさせられることです。

 19年から20年もの年月をかけて、これらとは真逆のこと、つまり、企業価値を創造し、ブランドを強化してきた人間にとって、今のように頽廃して無頓着になっているのを目にすることは本当に辛いものです。

 私は心配です。

 明らかに日産の業績が低下していることを心配しています。

 さらには、アライアンスを構築するためのビジョンがあるとは思えないので心配しています。

 率直に言って、テーブルを囲んでコンセンサスで意思決定をしていくということは、自動車業界ほど競争の激しい産業においては何らのビジョンも生み出しません。

 将来像を見せなければなりません。

 これから未来に向けて私たち(日産やアライアンス)の役割は何なのかについて明確にする必要があります。

 必要なときにはリーダーシップを発揮しなければいけないものです。

 そして、リーダーシップというものは、会社にとって良いことのために発揮されるものであって、(コンセンサスによる)妥協の産物を目指すものではありません。

 これは「独裁」などではなく、「リーダーシップ」なのです。いかなる会社でも行われていることです。

 コンセンサスか独裁か、この2つの選択肢しかないと考えている人は、「リーダーシップ」の本質を理解していません。

 アライアンスや日産ほどに複雑かつ巨大な組織のトップだったものとして、これはとても悲しいことです。

 最後に、私がお伝えしたいのは私の切実な希望です。

 私が最も強く望むことは、公正な裁判を受けることです。

 私は幸いにして、この訴訟で3人の有能な弁護士に弁護してもらうことができますが、彼らからは裁判の公正性についての安心材料は提供してもらえていません。

 私は弁護士ではありません。

 私はこの点について詳しくありませんが、今回の裁判において公正性を保証するために必要とされる具体的な条件について3人の弁護士に説明してもらいます。

 この裁判で私の無実を証明したいと切に願っています。

 ご清聴ありがとうございました。

 より多くのことを皆さんにお伝えしたり、皆さんの心にある多くの質問にお答えすることができなかったことを申し訳なく思います。

 しかし、将来、それが叶うことを願っています。