――語彙や漢字を学び「ことば力」を身につけると、どんなメリットがありますか?

 言葉はたくさんありますが、完全に同じ意味の言葉はありません。似たような言葉でありながら、なぜ先人たちが別の言葉を用意したのか。それは、そこに込めた思いが違ったからだと思うんです。だから、多くの言葉を知っていれば、自分が考えていることの微妙なところまで表現し、的確に伝えることができるようになります。予備校講師である私が、突然飛び込んだテレビの世界で、ほかの世界の人たちとコミュニケーションできているのも、言葉の「在庫」が多かったことも一つの理由ではないか、と思っています。

――「在庫」を増やすにはどうしたらいいのでしょうか?

 まずは「読むこと」です。本でも新聞でも、興味があるものならなんでもいい。とにかく読んで、語彙をインプットすることが重要です。

 しかし、読むだけでは自分の言葉にはなりません。意味をきちんと理解し、使えるようになるためには、やっぱり「書くこと」。手書きでなくても、パソコンでもスマホでもいい。文章にして書いてみる。それも重要なんです。書くことでしっかりと理解でき、自分の言葉として定着する。そうしているうちに思考力も自然と向上していきます。

 多くの高校生を指導していますが、きちんとした文章が書ける生徒が減ってきていると感じますね。ちゃんとした文章を書けるということは、論理的思考ができるということ。しかし今、ちょっと長い文章になると書けない、という子が多い。SNSに投稿したとしても、twitterの140文字では、論理的な文章を書く訓練としては不十分でしょう。

「自分には言葉が足りない」と自覚し、さらに増やそうと努力することにつながる。こうしてますます語彙力が伸びていくのです。

――語彙や漢字といった言葉に関する問題を出題するコーナー「ことば検定」を、朝の情報番組「グッド!モーニング」(テレビ朝日系 毎週月~金 あさ4:55~8:00放送 *一部地域を除く)で担当しています。どんな思いでクイズを出題、解説していますか?

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林先生が申し訳なく思っていること?