1軍デビューで“未経験”の守備位置に…不慣れなポジションをめぐる「珍ドラマ」【久保田龍雄】 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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1軍デビューで“未経験”の守備位置に…不慣れなポジションをめぐる「珍ドラマ」【久保田龍雄】

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久保田龍雄dot.
巨人時代の仁志敏久氏 (c)朝日新聞社

巨人時代の仁志敏久氏 (c)朝日新聞社

 プロ野球はストーブリーグに突入した。各チームの来季へ向けた補強戦略なども気になるところだが、シーズンオフとなり、プロ野球がない日々に寂しい思いをしている方も少なくないだろう。そこで、今回は「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、不慣れな守備位置にまつわる珍ドラマを振り返ってもらった。

*  *  *

 スタメンで1軍デビューをはたした若手選手が、1回の守備に就く直前になって、なぜかレフトからライトにポジション変更。「一体何が起きたんだろう?」とスタンドの観客が首を捻る事件が起きたのが、1990年5月2日の中日vs巨人(東京ドーム)。

 この日巨人は、2年目の四條稔が7番レフトで1軍デビューを飾ったが、いざ試合が始まると、四條はいきなりライトに変更され、ライト・吉村禎章がレフトに回った。

 実は、四條は高校、社会人を通じてレフトを守った経験が一度もなく、プロ入り後も守ったのはライトだけ。ただでさえデビュー戦で緊張しているのに、未経験のレフトを守るのでは、不安が募る一方だ。そこで意を決して、藤田元司監督に正直に打ち明けた。

 すると、藤田監督は「そりゃ、大変だ!」と驚き、すぐさま勝手を知ったライトに変えてくれたというしだい。「僕から藤田さんに話しかけたのは、それぐらいしかないんで、一番よく覚えています」(四條)。

 試合前に守備の不安を取り除いてもらった四條は、2回1死のプロ初打席で小松辰雄から中前にプロ初安打。「あれが大きかった。1打席目に打てたので、気持ちが楽になりました」。

 さらに4回2死一塁のチャンスに左越えタイムリー二塁打、6回2死一、三塁にも左前タイムリーと4打数3安打の猛打賞デビュー。守っても5回に立浪和義の右飛をきっちり処理した。試合は2対4で敗れたものの、一人でチームの全打点を挙げる活躍ぶりだった。

 もし「監督が決めたことだから」と不安な気持ちを引きずったままレフトを守っていたら、この日の結果も違ったものになっていたはず。守備位置ひとつ取っても、その舞台裏で、こんな人間ドラマが繰り広げられているのだから、野球は奥が深い。



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