福ふく温泉の前に設置された「雪女」のベンチ
福ふく温泉の前に設置された「雪女」のベンチ
凍らせられた人たちの塊(?) からのぞいてみると、雪女と目が合う
凍らせられた人たちの塊(?) からのぞいてみると、雪女と目が合う

 公園の池の中から突然現れる不気味な「カッパ」で話題となった兵庫県福崎町で、今度は妖怪と並んで座れる「妖怪ベンチ」が話題となっている。思わずフフッとなるような工夫があったり、身も心も凍るほど怖かったり……。18年10月、秋めいてきた同町を訪ねた。

【頭蓋骨の塊の穴から除くと雪女が…ギャー!となる写真や他の妖怪ベンチの写真はこちら】

 JR福崎駅から歩いて10分ほどの温泉施設、福ふく温泉。入り口そばに置かれた「雪女」のベンチを、家族連れが面白そうにスマートフォンで撮影していた。妖艶な仕草で座る雪女が見つめる先には、凍らせられた人たちだろうか。幾つもの頭蓋骨が塊になっている。

 ふと見ると、頭蓋骨の塊に穴が開いている。軽い気持ちで裏手に回ってのぞいてみると、ギャー! 雪女と目が合った!! 魅惑的かつ危険なまなざしでこちらをじっと見つめてくる。怖い。

 一方、福ふく温泉から徒歩約10分の精肉店「グルメミートにしおか」には、赤い着物姿の「また」のベンチ。両手をほおに添えて、小首をかしげている。舌なめずりが気になるが、可愛らしい。

 同社の代表取締役、西岡倭さん(74)は「平日は年配の方が、休日は家族連れがたくさん見に来ます」と喜ぶ。見に来た人が総菜や肉を買ってくれるため、設置前と比べて、売り上げが伸びたという。

「店に来る子どもたちも『猫また可愛い』と喜んでくれてうれしい。ベンチが町の活性化につながればいい」。夏には、ベンチの原型を制作した首藤秀利さん(57)も足を運んでくれたそうだ。

 ところ変わって、今度は町役場の向かいにあるパン屋「マリーポアラーヌ」。店の前には、「一反もめん」のベンチがある。一つ目の一反もめんが、なぜか湯のみを片手に座っている。大きく開いた口からは、顔出し看板のように顔が出せる仕組みだ。ちょっと怖いが、面白い。

 店では、一反もめんとカッパをモチーフにしたパンも販売。「観光客がパンを買ってくれ、お店の売り上げが増えました。SNSで広まっているのか、『インスタ(グラム)で見た』といって来られるお客様もいますね。子どもさんは『怖い怖い』と言いますが……」とスタッフの児島久美さん。

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「カッパを池から出せないかな」の一言から…