──しかし、安倍首相は、次の臨時国会から議論を始めたいとのスケジュールを出しています。

 自民党にとって憲法改正は党是なので、安倍首相があくまでも自民党の総裁として憲法改正について意見を述べることは自由だと思います。

 ただ、憲法改正の発議は内閣ではなく国会が行います。具体的には、憲法審査会で審議・議決される。公明党が通常の法律と違って「与党間協議をしない」と言っているのはこのためで、憲法改正は内閣に発議権がないからです。憲法審査会には閣僚も出席できません。あくまで、与野党の各政党が憲法に対する考え方、あるいは改正案を提示して与野党一緒に改正案を発議することが望ましい。

──与党政府内には「野党では維新の会と議論する」と主張する人もいます。

「野党と議論をする」と言った場合は、まずは野党第一党である国民民主党や立憲民主党としっかり話し合うことが大前提です。憲法審査会の幹事会には各政党の代表者が集まっていますから、そこで改正案を議論して、憲法審査会にも提出して意見を集約することが肝要ではないでしょうか。

──国民投票で否決されれば、安倍首相の政治責任が問われることになりませんか。

 たしかに慎重に物事を運んでいかないと、国民投票は別の政治的意味を持つことになります。

 今年7月、国民投票を専門的に研究している元BBC記者のデイビッド・カウリングさんと英国でお会いして、EU離脱の国民投票についてお話を伺ってきました。

 カウリングさんの分析によると、EU離脱の国民投票自体が、英国民が望んだものではなかったとのことです。では、なぜ実施されたのか。それは、キャメロン前首相が党内のEU離脱強硬派を説得することができず、党外でもイギリス独立党が人気を集め、保守党の支持層を切り崩していた。内憂外患の状態だったわけです。そこでキャメロン前首相は、国民投票でEU残留派が勝利すれば、党内外のEU離脱派を抑えることができると考えたわけです。

──国民投票を政局に利用したということですか。

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国民投票が政局になる?