和田アキ子 (c)朝日新聞社
和田アキ子 (c)朝日新聞社
人気急上昇中のMr.シャチホコ(オフィスK提供)
人気急上昇中のMr.シャチホコ(オフィスK提供)

 最近バラエティ番組でよく見かけるようになったのが、ものまね芸人のMr.シャチホコだ。本人の名前だけ聞いてもピンと来ないかもしれないが、彼の持ちネタの「和田アキ子のものまね」をテレビで目にしたことがある人は多いのではないか。Mr.シャチホコは今、和田アキ子に扮して『ウチのガヤがすみません!』『サンデージャポン』『全力!脱力タイムズ』など各局の人気番組に出演。その勢いはまだまだとどまるところを知らない。

【写真】似てる!?和田アキ子に扮したMr.シャチホコ

 これまでにも和田アキ子のものまねをする芸人は大勢いた。そのほとんどは歌手である和田の特徴的な歌い方を真似るものだった。しかし、Mr.シャチホコが目を付けたのは、バラエティ番組に出て普通に話をしているときの和田である。前に出した両手を軽く振りながら、ところどころ言葉を詰まらせてしゃべる。「カメラ」のことを「キャメラ」と言い、自分が知らないタレントが登場すると「何をされてる方なの?」と尋ねる。今まで誰も意識していなかったような和田のしゃべり方や動きの細かい特徴をよく捉えている。9月2日放送の『林先生が驚く初耳学!』(TBS系)ではついにMr.シャチホコが和田アキ子本人と共演を果たした。

 優れたものまねは優れた批評でもある。彼の和田アキ子のものまねによって、私たちは和田というタレントを新しい視点から楽しむことができるようになった。

 ものまねは「似せる」ということが基本になっている芸ではあるが、単に似ていれば似ているほどいいというものでもない。見ている人を楽しませたり笑わせたりするためには、似ているかどうかということよりも、そのものまねがそもそも芸として楽しめるものになっているかどうかということの方が重要である。

 ものまねはなぜ面白いのか。それを考えるにあたって、ものまね芸の評価軸として3つの要素を挙げたい。題材選び、切り口、似せ具合である。題材選びとは「誰(何)のものまねをするのか」ということだ。切り口とは「どういうふうに真似るのか」「どこに着目するのか」ということだ。似せ具合とは「どのくらい似せている(似ている)のか」ということだ。ものまねが面白いものになっているかどうかは、この3つの要素から判別できる。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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3つの要素を分析!「なぜ、笑えるのか」