■日本人選手の成長スピードも上がる

「アンドレスとルーカスは日本人だったら出さないようなタイミングでパスを出すし、テンポでやれる。ボールを失いそうなところでも失わない。相手はどうしても彼らのところに行かなくちゃいけなくなるから、その分、他の選手が2歩3歩、空いてくるのは間違いなくある。少しのズレですけど、そこが相手にとっては大きい。ホントに彼らの影響力は絶大だと思います」

 イニエスタのやや後方でアンカーを務めたMF藤田直之は神妙な面持ちで、このように語っていたが、今の神戸には目に見えない部分でもプラス効果がもたらされている。それは紛れもない事実だろう。そのような環境下でプレーすれば日本人選手たちの成長スピードも上がる。恩恵を受けているのが19歳の郷家ら若手だ。

「日頃の練習から1本1本のパスやシュートの精度だったりを近い距離で見れる。先制点が入ったシーンでも、スルスルスルっとペナの中に入って技術の高さを発揮するところなんかは僕も学ばなきゃいけない。イニエスタ含めてリズムを作れる選手が沢山いるんで動きやすい。いい関係ができていると思います」と郷家は嬉しそうに言う。

 イニエスタ、ポドルスキの両スターとのプレーを熱望してFC岐阜から8月頭に移籍してきた23歳の古橋も「練習から『もっと自分のよさを出していい』とイニエスタが言ってくれた。自分のよさは前に行くことなので、それを再認識して臨むことができた」と語り、待望のJ1初ゴールを喜んだ。そうやって若い世代の底上げが図られれば、神戸のみならず、日本サッカー界にとってもプラスになる。イニエスタとほぼ同じタイミングでサガン鳥栖に移籍したフェルナンド・トーレス含め、世界超一流選手の加入効果はやはり大きいのだ。

 神戸は2人のスターに加え、ブラジル人のブラジル人のウェリントン、アジア枠の韓国人GKキム・スンギュ、提携国枠のタイ人DFティーラトン、同じ提携国枠で8月に加わったカタール人DFアフメド・ヤセルと外国人選手が6人いる。神戸戦では5人が先発したが、ヤセルのコンディションが整えば近々スタメン入りする可能性も少なくない。となれば、チームの過半数を外国人が占める状況になる。Jリーグでは来季から外国人枠を撤廃する方向と言われるが、神戸は時代を先取りした陣容になっている。

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終盤戦で「台風の目」になりそうな神戸