■実家に住めば解決!? 同居できない諸事情

 実はご主人は幼いときに交通事故で両親を亡くし、母方の親戚に育てられた。今のご主人はさち子さんのようにすぐに誰かを介護をしなければならない、ということもない。それならば、さち子さんの実家に同居するとか、近くに住むという選択肢はなかったのだろうか。

結婚を機に、少しでも実家に近くなるようには引っ越したのですが。実は地理的な問題があって……。私の実家の方に住むと、彼が車通勤で大渋滞に巻き込まれることになるんです」

つまり、今住んでいる街は大きな会社や工場が多く、毎朝通勤する車が集中するのだ。

「私の通勤距離が長くても、このほうがお互いのためなんです。それと……、彼が会社から帰った後、独身のときと同じように、気楽に自転車に乗れる環境を変えたくなくて……」

 さち子さんの実家に住めば、ロードバイクに適した川の土手などが、すぐ近くにない。もしかしたら、さち子さんの本音はこちらにあるのかもしれない。

■出社前の30分が自分の時間&両親との時間

 両親だけの暮らしは心もとなく、とにかく心配。携帯が鳴ったら何かあったのではないかと、ドキッとするという。心臓に悪いので、両親からの電話の着信音だけ変えて、すぐにわかるようにしたり……。

「朝5時に起きて、6時40分に車で家を出ます。1時間ほどの通勤時間。ほぼ1日おきに実家に寄っているので、親の様子を見て、8時30分に出社。実家に寄らない日は会社の近くのコンビニの駐車場で原稿を書くんです。30分くらいは書けるかな。17時には退社。18時に帰宅して、晩御飯を作って、洗濯したり、アイロンかけたり、21時にはゆっくりできて、彼との団らん。22時過ぎには寝てます。そして、土日のどちらかは実家に帰るようにしています」

 執筆の時間はたったの30分。さち子さんはこれで満足しているのだろうか。

「通勤時間も長くなって、家事もひと通りしますから、それは仕方がないです。寝るまでの1時間、書こうと思えば書けるのですが、今は団らんが大切かな。創作活動の時間を減らしたくないから、結婚はしなくても……と思っていたころとはまったく違う心境ですね。書く内容も結婚したことで少し変化もしてきました」

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長年一緒だったのは両親だけではない…