記者が自身のインスタグラムに投稿した写真「著作物性」が認められるかが問われた
記者が自身のインスタグラムに投稿した写真「著作物性」が認められるかが問われた

 相手はこちらが写真の無断使用問題を追及している人間だと思いもしなかったのだろう? 実はこのほど、「アサヒカメラ」記者の写真が無断で使われていたことが判明したのだ。自ら書いた「対策マニュアル記事」に基づき、問題解決に踏み出した記者。本誌8月号ではその過程を克明に掲載しているが、実際は、サーバー会社への情報開示請求や「著作物性」の有無など、意外な“壁”にぶち当たった。そこで、法律的にどう戦っていくべきかを、みずほ中央法律事務所の三平聡史弁護士に聞いてみた。 

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 記者が自身のインスタグラムに投稿した、読んで面白かった漫画単行本3冊の写真が無断使用された問題。開示請求する過程で、記者が投稿した写真に「著作物性が確認できない」とサーバー会社からの通知書に記されていた。まず、記者の写真では認められなかった“著作物性”とは何なのだろうか?

「自分が撮った写真はすべて自動的に著作権が認められるわけではなく、その前提条件の一つに“著作物性”の有無があります。これは創造性があるかどうか。たとえば不動産業者が賃貸物件を紹介するために撮った室内写真は、誰が撮っても同じようなものなので著作物性があるとは言えません。一方、風景はそこまで行って撮影する必要があるため、著作物性が認められやすい傾向にあります」

 いくら「私が撮影した!」と声高に叫んでも、そもそも“著作物性”がなければ著作権も主張できないのだ。

 もし裁判まで持ち込んだとしても、問題は山積みだ。まずは弁護士に依頼するかどうか。コストをかけないのであれば、本人訴訟ということになるが、法的に素人であれば不安がつきまとう。

「裁判には内容証明の送付、仮処分申請、訴訟などさまざまな段階があります。どう進展するかわかりませんから、はじめからまとめて依頼するのではなく、段階的に依頼するのが一般的です。また、相手の著作権侵害が明らかで財力もあり、賠償金が得られる可能性が高いのであれば、着手金は抑えめに、成功報酬の割合を高めに設定しておくこともできます。ただし、著作権侵害における最終的な賠償額とコストのバランスを考えると、割に合わないことが多いでしょう」

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開示請求するだけでも意義がある