本の中では、コラムとして洞窟の科学知識を紹介している。例えば「洞窟で起こりうる危険」としてこんな感じだ。

<暗闇の洞窟には危険なことがたくさん潜んでいます。その中で最も危険なのは明かりを失うことです。もし、ランプが故障したら、その洞窟をよく知っている洞窟の専門家でも絶対に生きて出ることはできません。なので専門家さえ、必ず準備万全にしてから洞窟に入ります。なぜなら事故は突然起こるからです。主な危険要素として、落石や転落、落盤、体力の低下、閉所恐怖症によるパニック、低体温症などがあります>

 タイ洞窟でも、雨による増水や、水路を潜水しての脱出の危険性が盛んに議論されていた。この点に関して「洞窟のサバイバル」も、同様の指摘をしている。

<洞窟に地下水路がある場合、水中に支洞があるかや、行き止まりかどうか確認したりするために、洞窟潜水を行います。しかし、洞窟潜水は川や海でのダイビングと比べてはるかに危険で、命を失う可能性も高いです。その理由としては、まず水中洞窟は暗くて強い照明で照らしても光が遠くまで届かず、視界が悪いからです。そして、壁から突き出た二次生成物などの障害が多いことです。広々とした所で行うダイビングと違い、洞窟では水の流れが突然変わったり狭い所を通る時にぶつかることもあります。3つ目は地上の洞窟もそうですが、方向がわからなくなる可能性があります。そのため、目につく地形や二次生成物を覚えておき、必ず命綱の役割をするザイルを体につないで潜水しなければなりません>

 救出された13人の少年たちは、1週間余り病院で静養した後、記者会見に応じた。少年らは、「親に言わずに洞窟に行ったことを反省しています」「今後は行動に注意します」などと言い、「もう洞窟には行きません」と神妙に語った。

 もしもの時に生き残るための正しい知識、子ども向けとあなどることなかれ。

(文/今田 俊)