記事を逆恨みした犯人が5人射殺 ピュリッツアー賞記者が語る地方紙リスクとは? (1/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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記事を逆恨みした犯人が5人射殺 ピュリッツアー賞記者が語る地方紙リスクとは?

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長野美穂dot.
銃撃されたキャピタル・ガゼット紙の6月29日付朝刊オピニオン欄。「きょう私たちは言葉を失った。職場で起きた木曜日の銃撃事件の被害者を追悼するため、このページを白紙にしました」と説明し、犠牲者5人の名前を掲載した(C)朝日新聞社

銃撃されたキャピタル・ガゼット紙の6月29日付朝刊オピニオン欄。「きょう私たちは言葉を失った。職場で起きた木曜日の銃撃事件の被害者を追悼するため、このページを白紙にしました」と説明し、犠牲者5人の名前を掲載した(C)朝日新聞社

2015年のピュリッツアー賞ローカル報道部門を受賞したカリフォルニア州の地元紙デイリー・ブリーズ紙で記者として働いていたロブ・クズニアさん(筆者提供)

2015年のピュリッツアー賞ローカル報道部門を受賞したカリフォルニア州の地元紙デイリー・ブリーズ紙で記者として働いていたロブ・クズニアさん(筆者提供)

 6月末、アメリカ東部のメリーランド州の地方新聞社、キャピタル・ガゼット紙で、5人のエディターや記者が、機関銃を手にニューズルームに押し入った男に次々と射殺された。

【カリフォルニア州の地元紙デイリーブリーズ紙の記者だったロブ・クズニアさん】

 男は裏口をバリケードで塞ぎ、記者たちが室内から外に逃げられないようにする用意周到ぶりだった。

 ショッキングなニュース映像をテレビで見ながら、筆者は「ついにこんな日が来てしまったか」と愕然とした。

 キャピタル・ガゼット紙の発行部数は約3万部。メリーランド州の州都で、人口約4万人のアナポリス市のコミュニティに密着した地元のニュースを報道する新聞社だ。

 38歳の容疑者、ジャロッド・ラモスは、2012年に、新聞社と当時同社のコラムニストだった社員を相手取り、自分について新聞社が掲載した犯罪事件記事が事実ではなく、名誉毀損だとして、地元の裁判所に訴えを起こしていた。

 ラモスは、高校の同級生だった女性にフェイスブックで友人申請を送り、それを契機に、彼女に対しての長年に渡るストーキングといやがらせを続けてきた、と同紙は2011年に報じている。

 彼女が働く銀行にメールを送りつけて彼女を解雇に追い込もうとしたり、彼女に自殺しろと執拗に迫っていたことが明らかになると、ラモスは有罪を認め、裁判官から謹慎処分を命じられた。

 そんな一連の記事を掲載したキャピタル・ガゼット紙をラモスは訴えたわけだが、2015年に裁判所から「記事に間違いや名誉毀損の証拠は一切ない」との判決が下った。

 自分にとって都合の悪い犯罪記事を書かれた逆恨みーーー。それがこの事件の動機なのは明らかだ。さらに地元警察は、この襲撃は突発的な犯行ではなく、計画的に準備されたものだと発表している。

 筆者はミシガン州の地方紙で記者として数年働いた後、ロサンゼルスにある全国紙の記者に転職したが、米国の地方紙のエディターや記者、コラムニストが置かれている現状が、全国紙とは全く違うことを肌で感じてきた。

 人口数千人から数万人の規模の街のローカルネタや地元の犯罪記事や裁判所の判決記事を書く記者たちは、近所のスーパーや、小学校、郵便局、レストランなどで、取材対象者たちと日常的に顔を合わせる環境で生活し、仕事をしている。



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