その結果、森友学園の学校は15年1月、府の私学審議会から条件付きで認可されることとなった。規制緩和後、この緩和を使った小学校の設置申請は森友学園1件のみだという。これではまるで、橋下、松井両氏による規制緩和は、森友学園に便宜を図るためのものだったかのようだ。森友問題が明るみに出ると、この点が批判の対象となってきた。

 ただし、この規制緩和は、正式な手続きを経て行われている。パブリックコメントも実施されているし、陰に隠れて行ったものではない。つまり、これを不正だということは難しいのだ。

 ここまでは、報道などでも取り上げられたので知っている人もいると思うが、この話には、まだ続きがある。しかも、驚くべき話だから、是非知っておいてほしい。

 大阪府の審査基準には、「学校の土地は原則“自己所有地”でなくてはならず、(一部例外はあるものの、その例外の場合でも)特に校舎だけは“借地”の上には建てられない」とある。借地の場合、たとえば学校の経営難やその他の事情で、借地契約が解除されたときに、教育が安定的に続けられなくなったりして大きな混乱が起きる。だから、教育に絶対に欠かせない校舎だけは借地に建てないでほしいということなのだ。したがって、物置などであれば、そこまで厳格にする必要はないので、例外はいくつか認められている。

 森友学園は、資金不足のため、本件土地を最初から買い取るだけのお金がなく、そのため、財務省と10年以内に土地を買い取るという約束で当初10年は借地とする契約を交わしたことは前に述べたとおりだ。

 しかし、その契約だと借地の上に校舎を建てることになる。ということは、この小学校の新設は規制緩和後の大阪府の審査基準に照らしても、基準違反であるのは明らかだった。

 このような場合、本来は、2014年に森友学園が大阪府に申請書を提出した段階で、受理してもらえないのが普通だ。それなのに、明白な基準違反があるのに申請を受理したということは、事実上、府の職員が森友学園に対して、借地でもなんとか審査を通しますという約束をしていたようなもの。つまり、ミスではなく、「故意」である。

 この問題を職員のチェックミスかもしれないと考える人もいるかもしれないが、それは行政の現場を知らない人の見方だ。学校新設というように大きな認可案件では、申請者が大阪府に相談しながら、府の指導を受けて、必要な条件をそろえていくという手順を踏む。したがって、突然認可申請が出てきて、慌てて書類に目を通した結果、間違って申請を受理するなどということは起きない。

 大阪府は事前の相談の段階で、借地問題をあえて不問に付し、申請を受理した。その後、私学審議会に設置認可しても良いかと諮問したが、もちろん、審査基準に違反しているという説明はしていないはずだ。基準違反だと審議会委員が認識していたら、認可適当という答えは出てこない。結局、大阪府はこれを不問に付したまま審議会に諮問し、森友学園の小学校の条件付き設置「認可適当」という答申を得た。森友学園と近畿財務局は、それを前提にしてその後の手続きと建設工事を進めることになった。

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どうして「認可適当」となったのか?