愛媛県出身のメンバーで経済学部2年の十亀稔理(そがめ・みのり)さん(20)は「せっかく4年間を過ごすのだから、香川を好きになりたい」と考えていた。伝統的なものや芸術は好きだったが、それまで盆栽に興味はなかったという。

「盆栽は鑑賞用で、めっちゃ大きい、高いというイメージでしたが、初めて盆栽教室に参加した時に、小さい苗が並んでいて、(私でも)『入っていい世界なんだ』と思いました」と振り返る。「育てていると愛着がわきますし、何年も楽しめるのがうれしいです」

 他にも、お気に入りの男性アイドルが盆栽好きなことから「彼と同じように盆栽を鑑賞できるようになりたい」という理由で加入したメンバーもいるそうだ。

 女子大生の目から見た盆栽の魅力とは何だろうか。首藤さんは「以前はとっつきにくいイメージだったのですが、実際に育ててみると、普通の生活にもなじんで、それが魅力だと感じています」と話す。

「実は、幻のCDがあるのです」

 古川教授が、結成当時の秘話を明かしてくれた。ゼミ生が作詞、作曲をしたオリジナル曲を、初代メンバー4人が歌って録音したが、総合的なクオリティーを勘案した結果、“お蔵入り”となったのだ。

「今となっては(“お蔵入り”になって)良かった。結果、まじめに盆栽に取り組むことによって道が開けたと感じています。学生たちには、地域の皆さんとかかわりながら、いろいろな経験をしてほしい」(古川教授)

 香川県によると、生産者の高齢化や後継者不足で、盆栽の生産量は減少傾向にある。国内消費が伸び悩む一方、ヨーロッパなどでは、アートとしての「BONSAI」が人気だ。「技術を教えてほしい」と高松市内の盆栽職人のもとを訪れ、数週間から数カ月かけて学ぶ外国人もいるという。

 学生たちの熱のこもった活動は功を奏し、地元企業のイベントにも参加するなど、盆栽の輪は着実に広がっている。今後は、盆栽の魅力や産地、生産者の紹介などの動画配信にも力を入れていくつもりだ。「認知度ももっと向上させたいし、若者へのアピールも考えていきたい」(首藤さん)

 堅苦しいイメージを和らげ、もっと身近で、カワイイ「BONSAI」へ。女子大生たちの奮闘は続く。(ライター・南文枝)