池の水抜く新兵器「かいぼり君」と開発に携わった成田の福井啓太常務
池の水抜く新兵器「かいぼり君」と開発に携わった成田の福井啓太常務
2017年12月、兵庫県南あわじ市の谷田池で行われたかいぼりの様子(成田提供)
2017年12月、兵庫県南あわじ市の谷田池で行われたかいぼりの様子(成田提供)
かいぼり現場では、真ん中のホースで泥を吸い上げ、オレンジ色のホースが付いている部分(写真では右側)から川などへ流す(成田提供)
かいぼり現場では、真ん中のホースで泥を吸い上げ、オレンジ色のホースが付いている部分(写真では右側)から川などへ流す(成田提供)
かいぼり君は大小2種類ある。いずれも重機が入れない小さなため池で使えるのが特長だ
かいぼり君は大小2種類ある。いずれも重機が入れない小さなため池で使えるのが特長だ

 全国各地の池の水を抜き、外来生物を調査するテレビ東京の人気番組「池の水ぜんぶ抜く」で話題になった「かいぼり」。多くの人手が必要で、かなりハードな作業であるかいぼりに役立つ装置を、日本一ため池の数が多いといわれる兵庫県・淡路島の建設会社が開発した。いったいどのような装置なのか。

【兵庫県南あわじ市の谷田池で行われたかいぼりの様子はこちら】

 その名も「かいぼり君」。ステンレス製のパイプを組み合わせた横に長いT字型の筒で、サイズは長さ84センチと65センチの2種類ある。筒にホースとポンプをつないで水を流すと、池の底にたまった泥を吸い上げて流してくれるのだ。兵庫県洲本市の建設会社「成田」が、食品プラントなどを手掛ける市内のメーカー「キド」の協力を得てつくった。

 ため池の水を抜いて、底にたまった土砂やヘドロを取り除くかいぼり。もともと、池の貯水量の確保や水質浄化、堤が破損していないかなどを調べたりするために、農閑期に行われてきた。

「池の水ぜんぶ抜く」の目的は外来生物の調査だが、淡路島では、排水処理施設や下水道の整備などできれいになり過ぎた海に、栄養を送ろうと、兵庫県や、島で農業・漁業に携わる人たちが協力してかいぼりを行っている。栄養分を多く含むため池の泥を海に流すことで、ノリの色落ち防止や漁獲量の増加を図る試みだ。

 県によると、2013年度から毎年8カ所前後のため池でかいぼりを行ったところ、海水に含まれる栄養塩が1~2%上昇したという調査結果も出ているという。

 だが、池の底にたまった土砂やヘドロを取り除くかいぼりは重労働だ。池までの道がない、またはあっても重機が通れない場合は、人海戦術がメーンとなる。しかし近年、島では農業者人口の減少や高齢化でかいぼりの人手を確保するのが難しくなってきた。

 県によると、淡路島には約2万3000のため池があるが、これらの理由から、数十年かいぼりが行われていない池も少なくないという。成田の常務、福井啓太さん(35)によると、長年放置された結果、土手の下部にあり、川に泥を流すための管が泥で埋まっていたり、管の中にカメが詰まっていたりすることもあるそうだ。

 池の泥を効率的に取り除くにはどうすればよいか。福井さんは、2017年初めごろ、県洲本土地改良事務所の担当者から相談を受け、かいぼり君の開発を始めた。「どこにでもある道具を使って、田舎のおじいちゃんでも扱えるものを」と試行錯誤し、成人男性が片手で持てる、コンパクトなかいぼり君が生まれたのだ。

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