「カナディアン号」はバンクーバーを発ったあと、列車はロッキー山脈に向けて走り続けます。目的地のジャスパーまでは、ダイヤ上は19時間半の旅です。しかし既に3時間近い遅れなので、いったい何時に着くのでしょうか。

 僕が乗った時のカナディアン号の編成ですが、ディーゼル機関車が前に2両、荷物車が1両、そして客車が25両の28両編成でした。長さは700メートル以上になり、東海道新幹線の倍はあります。25両ある客車の内訳は、「エコノミークラス」と呼ばれる、寝台ではない座席タイプの車両が2両、食堂車が3両分散し、さらにパノラマカーやドームカーが数両あって、残りの14両が「スリーパークラス」と呼ばれる寝台車です。

 僕は妻と一緒に旅行していたので、2人用の寝台に泊まりました。そのお値段、なんと22万円もします! 直前に買ったので、割引料金は使えず定価の値段になってしまったのですが、広さはかつての北斗星のA寝台個室よりも狭かった印象です。トイレは各部屋についているのですが、シャワーは共用になっています。もし一人旅の時なら1人用個室を利用することになりますが、これはなんと部屋のテーブルの台を上にあげると、下から便座が現れる仕組みになっています。寝室兼トイレというわけです。これでも一泊で10万円以上もします。 食事や飲み物はアルコールも含めてこの金額のうちに入っています……が、それでも高いことは否めません。

 しかし、道中の景色は最高でした。ロッキー山脈の山々と、カナダの広大な大地の風景は一生忘れられません。途中、貨物列車とすれ違いました。先頭から数えてみたら、その数なんと158両。景色も列車も何もかもが規格外でしたね。

 2時間40分遅れでバンクーバーを発車した「カナディアン号」がジャスパーに到着したのは、翌日19時ごろでした。予定では16時着だったので、結局遅れを取り戻すことなく、ほぼ3時間遅れのまま着きました。ジャスパー駅に着いた時、ホームの上ではその先に向かう乗客が待っていたわけですが、「やれやれ、やっと来たか」と疲れ切った表情をしていました。翌々日には僕もジャスパーからエドモントンに向かう予定だったので、早くも不安になってしまいました。

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