ところが、その約12時間後の22時47分配信の記事では、トーンも内容もがらりと変わる。その見出しが「トヨタ、テスラと決別 全株売却しEV独自開発を加速」と変わり、記事の内容でも、テスラによる電池の供給停止ではなく、「車開発で優先する項目の違いなどから、14年にはテスラからの電池調達を中止」として、トヨタの方が電池を買うのをやめたのだという表現に書き換えられていたのだ。いかにも、トヨタの方が、積極的にテスラとの縁を切りに行ったように見えるし、EV開発もテスラに頼るのではなく、「独自」に開発した方が早いとトヨタが考えたというトーンに一変している。

 また、株式売却については、「全て手放した」と断定している。トヨタ側と話をして確認が取れたことがわかる。

 この記事の変化を見ると、当初は、内々に情報をつかんだ日経が、第一報として書いた記事に対して、トヨタの広報が、日経新聞に、自社の立場を良く見せるための「説明」をして、その結果記事が変わったことが推測される。トヨタに逆らうことは、経済紙日経には難しいのだろう。

 しかし、客観的にみると、どんなにトヨタが強がってみても、テスラのEV攻勢にトヨタが負けたことははっきりしている。テスラ社は、先行投資で赤字が続くが、時価総額は今年4月に510億ドル(約5兆6000億円)に達し、100倍以上の販売台数があるGMを一時抜いた。トヨタは、水素自動車に賭けてきたのが裏目に出て、EV開発競争では、世界の大手メーカー中最後尾に取り残されたのだが、それを認めることは「世界トップの自動車メーカー」のプライドが許さなかったのだろう。

 トヨタの本格的電気自動車の発売は20年ごろとしているが、それまでの間はPHVでしのぐしかない。しかし、鳴り物入りで発売した新型のPHVプリウスの電池による航続距離は、最大でもわずか68キロ。欧米の大手メーカーに比べて、その差は歴然としている。

 ここまで書けば、相当に深刻な状況だということはお分かりいただけると思う。

次のページ