兵庫県川西市が製作した「完食戦士 中年カラダ」のポスター(兵庫県川西市提供)
兵庫県川西市が製作した「完食戦士 中年カラダ」のポスター(兵庫県川西市提供)
「感謝を込めてもう一口」。お皿を空にすることに心血を注ぐ(兵庫県川西市提供)
「感謝を込めてもう一口」。お皿を空にすることに心血を注ぐ(兵庫県川西市提供)
福岡市で食べ残しをなくす運動を展開する「宴会部長」のポスター(福岡市提供)
福岡市で食べ残しをなくす運動を展開する「宴会部長」のポスター(福岡市提供)
きちんと完食すれば、宴会部長の満面の笑みが見られる(福岡市提供)
きちんと完食すれば、宴会部長の満面の笑みが見られる(福岡市提供)

 家庭や飲食店などで残したり、使いきれなかったりして、まだ食べられる食材を捨ててしまう「食品ロス」が問題となっている。国の2014年度の推計では、その量はなんと年間621万トン。そのうち半分以上の339万トンは、飲食店などの事業者から出ているという。そんな事態を憂えて、地方から、中年男性をモチーフにしたキャラクターが立ち上がった――。

【インパクト大!もう一人のヒーロー「完食一徹」はこちら】

「完食は愛だ!」

 兵庫県川西市で17年3月、そんな思いを胸に料理の完食を呼びかける「完食戦士 中年カラダ」が登場した。白いシャツに青いズボンという、ぱっと見はイケメンの40代男性だが、頭には「完」「食」と書かれたゴーグル付きのヘルメットをかぶり、腰には空になった皿の絵が描かれた赤いベルトを巻いている。右手には、完食を促すはしを持ち、ただならぬ雰囲気を漂わせている。

 完食戦士は、川西市が3月から始めた「食べ残しゼロ運動」の推進キャラクターだ。市が、11年に長野県松本市で始まり、全国に広がっている「30・10(さんまるいちまる)運動」(宴会開始後の30分は自席で料理を楽しみ、終了10分前には、自席に戻り残った料理を食べることを勧める運動)に参加したことから生まれた。

 完食戦士の正体は、妻と小学2年生の息子がいる会社員、空田完吉(からだ・かんきち)。川西市によると、空田完吉はある日、家族と出かけたフリーマーケットで、ひげの老人が売っていた「ヒーローになれる箸(はし)」を手に入れる。その日の夕食、息子がチンジャオロースのピーマンをよけ出したのを見た瞬間、はしが七色に光り出し、ヒーローに変身してしまったというのだ。

 なぜ中年男性が、食べ残しゼロ運動の推進キャラとなったのか。市の担当者は「インパクトを重視した」と話す。「宴会などで、よく飲食店を利用する年代の方にアピールしたかった」ともいう。

 市は、「待てよ……。10分だけでいい、俺に時間をくれないか」「感謝を込めてもう一口」など、食べ残しをなくそうという完食戦士の熱い思いが伝わってくる4種類のポスターを6000枚製作。17年3月末から4月にかけて、飲食業組合を通じて市内の飲食店に配布し、周知を図っている。

 店の反応はさまざまで、「おもしろい」「すごいね」と評価する声がある一方で、「店の雰囲気に合わないかも」という声もある。だが、市の担当者は「まずは目につくことで、食品ロスの問題に興味を持ってもらいたい」と意気込む。

 そんな川西市に先駆け、福岡市では15年から、飲食店での食べ残しをなくし、食品廃棄物の削減を推進する「もったいない!食べ残しをなくそう福岡エコ運動」のキャラクターとして、こわもての中年男性「宴会部長 完食一徹(かんしょく・いってつ)」を起用している。

次のページ