iPadはNTTドコモによるモバイル通信が可能になっており、ネットサーフィンや地図アプリで今自分がどこにいるのか、知ることができる。他にも、NTTドコモの音楽配信サービス「dヒッツ」を通じて、好きな音楽をダウンロードして聴くことも可能だ。

 そうこうしてiPadを触っていると、いざバスが走り出した――バスは東京都千代田区内幸町の帝国ホテルを発車し、日比谷公園、霞ヶ関の官庁街を抜け東海道は国道1号を南進していく。やがて左手に愛宕の山、やがてオレンジ色をした東京タワーが見えてくる。

 続いて増上寺、御成門の前を通り、また帝国ホテルへと戻ってきた。

 印象的だったのが、iPadの使い方の説明書きの中で、入力方法がローマ字入力ではなく、「あいうえお」の50音を押して入力する方式であったことだ。

 利用者の年齢層は定年を迎えた高齢者を主なターゲットにしているようで、こうした人の中には、iPadなどタブレット端末なんて一度も触ったことがない人も少なくないだろう。そんな人がバスの中で地図アプリなどを立ち上げ、今自分のいる位置が手に取るようにわかる感覚を初めて味わったら、どれだけ旅が楽しくなるだろう。

 全席にiPadを配置した意義について、NTTドコモの内匠裕喜・第二法人営業部第四営業担当部長は会見でこう主張した。

「iPadを活用することで、インターネット接続や音楽配信サービスなどを通じ、より楽しい旅の空間を演出できるのではないか」

 また、クラブツーリズム株式会社、栗山千三・テーマ旅行部部長は「バスだけが特別に豪華というものではなく、知ったり学んだりという、旅の部分で特別なものを用意したい。観光先においても、一般の方では普段見られないようなものを特別に見学できるような旅行商品を提供していければ」と話す。

 そんな豪華バスツアーの料金だが、一泊二日で10万円を越えるものがある一方、2万円台で東京近郊を巡る日帰りツアーもある。どれも貴重な体験になりそうなものばかりで、何かの自分へのご褒美にこの「碧号」で旅に出るのもいいかもしれない。(文・河嶌太郎)