ただ、陽岱鋼はWBCの台湾代表を辞退し、調整に専念したことから、開幕には万全の態勢で挑める見込みが出ている。マギーも、昨年はメジャーでは30試合しか出場していないが、3Aで打率.317を残すなど好打は健在だ。外国人選手のオープン戦成績はアテにならないだけに、心配する必要はないのかもしれない。吉川尚は現在、二軍や三軍で実戦にも出場しているが、開幕までに長年レギュラー不在の二塁手争いに名乗りを挙げることができるか。

 各ポジションの競争は激化しているはずだが、キャンプを視察したOBが揃って「覇気が感じられない」と苦言を呈するなど、V奪回へムードは最高潮、というわけではないようだ。当たり前のことだが、バッテリーを除くポジションのレギュラーは7人に限定されている。内野手では、決まっているのはショートの坂本勇人だけ。マギーはサードかファーストに入ることが有力だが、そこには村田修一と阿部慎之助がおり、3人のうち1人はベンチ、ということになる。米国ではセカンドの経験もあるマギーだが、そうなると必然的に吉川尚の出番はなくなる。外野も長野久義と陽岱鋼が確定とすると、残りは1枠しかない。昨季、打撃で進境を見せた立岡宗一郎や一時はレギュラーの座を掴みかけた橋本到、ベテランの亀井善行なども、定位置確保は厳しい状況となる。

 外国人枠も深刻な問題だ。投手では先発のマイコラスとリリーフのマシソンはほぼ確定で、マギーが4番候補とすれば一軍で使えるのは残り1人となる。抑え候補のカミネロに昨季24本塁打のギャレット、そしてもう一人のセカンド候補であるクルーズのうち、2人は二軍暮らしということになる。

 今年の巨人は、1990年代に「4番打者ばかりを集めた」と言われた大型補強とは一線を画す。ただ、人員過多になることは同じで、既存の若手や中堅選手のモチベーションが上がらず、それが「活気のないキャンプ」の要因となっているのかもしれない。それでもチームとしての層の厚さは他球団の追随を許さないものがあり、ぶっちぎりの優勝となっても何の不思議もない。30億円補強が宝の持ち腐れになるかどうかは、2年目を迎える高橋由伸監督のハンドリング次第となりそうだ。