ブルージェイズとの地区シリーズ第2戦で、ダルビッシュが4本の本塁打を許したのはショッキングな出来事だった。右のエースの乱調も響き、優勝候補の一角に挙げられたレンジャーズもあえなく3連敗でシーズン終了。メジャー4年目のダルビッシュにとっても、悔いの残る結末になってしまった。
ただ、昨年3月に右ひじにトミー・ジョン手術を受けた右腕にとって、今季が復帰1年目だったことも留意しておく必要があるのだろう。5月にカムバック登板を飾ると、シーズン中は17先発で7勝5敗、防御率3.41。その過程で、絶好調時の片鱗を見せていたことは心強い材料だ。
「ダルビッシュはレンジャーズで過ごした2016年シーズンをとても楽しんでいたように見えた。良い感触が残っている間に契約延長交渉に臨むべきだ。友好関係だからといって契約の値引きはないにしても、公正なオファーならオープンな姿勢で受け入れてもらえるだろう」
ダラス・モーニングニュース紙のエバン・グラント記者はそう記し、来季が契約最終年の右腕との迅速な契約延長交渉を提言している。グラント記者はダルビッシュの新契約を6年1億8000万ドル(約188億円)と予想している。こんな話が地元メディアから出て、最高級の条件が予測されていることは、メジャーでも最高級と呼ばれる素材への評価は下がっていないことの証明と言える。
トミー・ジョン手術を受けた投手が完調に戻るのは一般的に復帰2年目と言われる。プレーオフで屈辱を味わった後でも、本領を発揮すべき来年に向けて、今季がダルビッシュにとって意味のあるシーズンだった事実に変わりはあるまい。
上原は地区シリーズでインディアンスに敗れた後「(まだやれるという想いは)常に持っています。(ただ、)僕が判断することじゃない。獲る側が判断すること」とコメント。敗北のショックもあってか、来季の現役続行は白紙であることを繰り返していた。
ただ、右胸筋の負傷で7月中旬から戦線離脱しながら、9月7日にカムバック後は11イニングを投げて6安打無失点。プレーオフでも2試合を無失点に封じるなど、まさかのスイープ負けを喫したレッドソックスの中でも好材料であり続けた。来春で42歳になるとはいえ、これだけの投球ができるリリーバーにメジャーの各チームが触手を伸ばさないとは思えない。
“チーム事情から再契約は分からない”と前置きしながらも、ボストンのメディアも上原の力自体は高く評価した報道が多い。レッドソックス残留にせよ、他チームに移籍となるにせよ、今オフには悪くない金額の1年契約を受け取るのではないか。それに足りる力をシーズン終盤、プレーオフでアピールできたという意味で、今季は上原にとって価値のあるシーズンだった。(文・杉浦大介)