それでもまだマシな方だった。香港戦は19-0で7回コールド、インドネシア戦は35-0の5回コールドでの決着で、2試合ともにノーヒッターのおまけ付き。せめて守備さえ鍛えられていれば違ったが、平凡なセカンドゴロが内野安打となり、センターフライが二塁打、ライト前ヒットが後逸して三塁打となっては、勝負として成立しなかった。

 野球に限らず、勝敗を争うスポーツでは、相手の存在が非常に重要になる。実力が拮抗していれば試合は盛り上がり、どちらが勝つか分からない中でこそドラマが生まれ、勝った時の喜びも大きなものになる。始まる前から結果が分かっていては、大会自体の魅力が下がってしまうことになる。日本国内では“怪物”清宮幸太郎(早稲田実業高)を選出しなかったことが、注目度低下の大きな要因の一つになったという声もあるが、それよりもライバル国の実力アップの方が大会の盛り上げのためには必要だろう。

 世界的に見ても、ごく一部の国を除いて、道具、グラウンドを含め、野球をプレーする環境、そして野球を続ける環境が整っていないのが現状だ。2020年東京五輪での復活は決まったが、野球を普及させるにはまだまだやらなくてはいけないことは多い。そのことを再認識した大会であったと言えるだろう。

 今大会の結果を踏まえ、来年はU-18ワールドカップが開催され、次回のU-18アジア選手権は2018年に行われる予定だ。そのなかで日本と相手チームとのスコアの差が縮まれば、それは「野球の普及だ」と喜ぶべきだろう。今回の優勝で「日本は強い!」、「日本はすごい!」とただ単に喜んでいるだけでは、野球界全体の前進はない。