還暦を過ぎても絶好調 ステージに立つChar(提供:株式会社ZICCA)
還暦を過ぎても絶好調 ステージに立つChar(提供:株式会社ZICCA)

 6月25日の土曜日、渋谷東急文化村のオーチャード・ホールでCharのコンサートを観た。じつは、正式な形ではなかったものの、あのカルメン・マキがゲスト出演するという情報をつかんでいたため、「ぜひとも」と渋谷に向かったのだが、その前にちょっと、ここ数年のCharの動きを振り返っておきたい。

 早くからプロのミュージシャンとして活躍し、日本のロック界のパイオニアの一人として後進に多大な影響を与えてきたChar=竹中尚人は、昨年6月16日、還暦を迎えている。その人生の大きな節目にタイミングをあわせて発表されたのが、アルバム『ROCK+』。かまやつひろし、松任谷由実、奥田民生、宮藤官九郎、故・石田長生、息子のJESSEなど12人の音楽仲間に新曲の書き下ろしを依頼し、原則的には楽曲プロデュースなども委ねる形で仕上げた、興味深いアルバムだ。タイトルは「六十」とも読める洒落の効いたものだが、そこには「オレのロックになにをプラスしてくれるか?」という、ある意味では挑戦ともとれる想いが込められていた。

 誕生日前日にはその豪華な顔ぶれの仲間たちも参加した記念コンサートが日本武道館で行なわれ、そして、今年に入ってからは全国を回るツアーがつづけられてきた。オーチャード・ホール公演はそのファイナルとなるもので、翌26日も含めて超満員だった(会場のキャパシティは約2,000人)。

 61歳となったCharは、少し喉を痛めていたようだが、ギターはまさに絶好調という印象。ここ数年ずっと行動をともにしてきたバンドとのコンビネーションも文句なしという感じだった。羽飾りのついた帽子、ジーンズ、白いシャツと長めのベスト。独特のファッションでステージ中央に立ち、「Smokey」「Shinin’ You, Shinin’ Day」など代表曲を聞かせていくという内容のライヴだったが、『ROCK+』からも、JESSEの「I’m Just Like You」、石田長生の「ニッポンChar, Char, Char」、佐藤タイジの「悪魔との契約満了」の3曲を演奏。アルバム発売から1年が経過し、ツアーを通じて鍛え上げられてきたこともあり、どれも、「Charのために書かれた曲」から「Charの曲」へと表情を変えていた。深いメッセージの込められた「悪魔~」はとりわけ素晴らしかった。

 カルメン・マキは中盤に登場。すでに書いたとおり、彼女の出演は告知されていなかったのだが、会場の空気とバンドの音にすっと溶け込み、存在感を増したヴォーカルでカクタスの「ロックンロール・チルドレン」やロッド・スチュアートのヴァージョンで知られる「イット・イズント・ザ・スポッライト」(歌詞は浅川マキ訳で)などを聞かせてくれた。二人はCharが十代のころからの音楽仲間で、2014年に行なわれたカルメン・マキの45周年ライヴにはCharバンドも参加してもいる。そういった長い時間のあいだに培われてきたロック姉弟愛のようなものも感じさせるライヴだった。(大友博)

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大友博

大友博

大友博(おおともひろし)1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。dot.内の「Music Street」で現在「ディラン名盤20選」を連載中

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