実際にこの年に至るまでも、上原はマウンドに立ちさえすれば常にハイレベルの成績を残していた。しかし、渡米直後の3年間は故障が多く、シーズン中に決まって長期離脱していた。それが2013年は73試合、2014年は64試合と、意外なことに加齢とともに登板数が増えていく。

 昨季こそ打球を手に当てるという不運なケガで43試合の登板に止まったが、今年は再び自己最多登板も可能なペースで投げている。この衰え知らずの働きの陰には、丹念なコンディション調整と、そして徐々に学ぶことを可能にした適応能力がある。

 「もともと才能に満ちた投手が、自分の身体を十分にケアしている。食事にも気を遣い、十分に休みをとり、丹念に調整をこなし、登板後ですらもトレーニングを怠らない。おかげで23歳の頃から同じ球速を保ち続けている。レッドソックスの栄養士、医療団も良い仕事をし、ウェイトトレーニングも的確にこなしている。それらがすべて重なって、過去数年の好結果に繋がっているんだ。キャリアのこの時点でも数字を向上させる術を見つけているのは特筆すべきことだし、彼の投手としてのセンスの良さを物語っているのだろう」

 2013年、当時レッドソックスの投手コーチを務めていたファン・ニエベス投手コーチがそう証言していた。また、2010年から上原の専属トレーナーとして身体作りを担当する内窪信一郎氏は、メジャーでキャリアを積む過程で適応を続けたプロセスの大切さを指摘する。

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