「中国の若者から見られる“日本”は、僕らが思っている以上に偏っていて、主にポップカルチャー、そのなかでもアニメがすごく見られていて。あとは男同士だと、AVの話になるんです、AVは中国で禁止されているので(笑い)。とにかく中国では、これらの日本の映像コンテンツがものすごく強かった」

 現在では版権処理された正規版が多く放送されているが、当時の中国で日本アニメの多くは海賊版として流通しており、日本ではそれが問題視されていた。しかし現地に渡って山下さんが感じたのは、そうした海賊版を自ら探してでも見ようとする、日本コンテンツに対する若者たちの強い興味だった。日本人よりも日本アニメに精通した中国人も多く、彼らが日本のコンテンツや情報に飢えていると感じた。

 そういった日本コンテンツへの情熱は中国版「コミケ」でも感じられたという。マンガ・アニメの祭典とされるコミケこと「コミックマーケット」は、日本では“オタク”のイベント、といったイメージが強い。だが、中国のそれは、まったく違った雰囲気だった。

「2010年に初めて中国のコミケを見学したんですが、ものすごいパワーを感じました。文化祭のような感じで、ものすごくポジティブな雰囲気なんです。中国には文化祭などの学校行事がないので、自分たちで何かを作って発表する場がない。そういった欲求が凝縮されて、コミケで発散されている感じがしました。中国のコミケには独自の催しもあって、アニメキャラクターに扮して劇を披露する“コスプレ演劇”があったり、アニメソングなんかに合わせて踊る、日本で言う“~を踊ってみた”のダンスコンテストがあったり。もうオタクっていう意識は全然なくて、若者が楽しむお祭りなんです」

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