聞けば、チェーン店コーヒーショップの店長経験者や、客の回転が早く並べたグラスにお冷をまとめて注ぐような店に勤務していた人もスタッフとして加わっているとか。マニュアルを捨て、純喫茶への回帰を目指す決意で応募してきたそうだ。

「ツタヤがはぐくんできた歴史の重みを理解し、『じっくりとコーヒーを味わっていただく店で働きたい』というスタッフが集まってくれました。100年の節目、そして次の100年を目指します」(4代目店主の宇瀬さん)

 昨年、店の前に隈研吾さんの設計による富山ガラス美術館「TOYAMAキラリ」がオープンした。同施設内に併設された富山市立図書館は、1階の情報コーナーが午前7時から開館していることなどから、“モーニング復活”のアイデアが生まれた。復活にあたり開店時刻を午前11時から午前7時に変更。コーヒーに半トーストが付いた「コーヒーセット」(450円)と、コーヒーに半トースト、モーニングプレート(卵料理、ベーコン、サラダ)の「ブランチセット」(750円)を提供している。

 一方、コーヒーを1杯ずつ丁寧に入れる純喫茶のスタンスを守りながら、チェーン店のような手法も取り入れている。紙コップにふたを付けた持ち帰り用カップを導入したのだ。北陸新幹線の開業で観光客が増えたことなどから、多様なニーズに応えての一策である。今後は積極的にフードメニューを見直すという。

「観光客が増え、地元の大学生が企画した“まちなか朝食会”でコーヒーを提供してほしいなど、新しいお客様から声がかかるようになりました。また、『まだお店があったんだね』と、何十年ぶりに来店したという方もおられます」(4代目店主の宇瀬さん)

 開業100年を見据えた“ツタヤ”の戦略は新旧あの手この手。お客さんの顔ぶれも新旧入り交じり、にぎわっている。

(ライター・若林朋子)