「観光地だと、大人でもパッと反応して笑顔になったり、写真を撮らせてくださいなど声を掛けてくれたりする方が多いんですが、平日のビジネス街だとそもそもこの車が目に入らない人が多いですね。ちらっと見るぐらいで、立ち止まったり声を掛けたりはほとんど無い」(小笠原さん)。仕事に追われる人々は、これほどの車を見ても驚く余裕も失っているのだろうか。

 宿は2人の友人たちから提供されることが多い。「もう、どの場所でも大宴会でもてなしてもらって。僕はお酒は飲みますが、出発してすぐ『これは1カ月身体がもたん!』と恐ろしくなりました。新潟では教会の牧師さんが宿を提供してくれたので、教会なら、さすがに酒は出ないだろう、休肝日にできると思ったら、そのすぐ横に彼の自宅があって、そちらに招かれた。『さあ、飲んでください!』大量にお酒が出てきました(笑)。正直『神様、助けてください!』と言いたかったですよ」(知念さん)。

 山形県村山市では、市役所前で職員たちが「歓迎 沖縄発ジャングルカー 日本縦断キャラバンin村山」という横断幕を持って待ち構え、知念さんたちも驚くほどの歓迎を受けた。山形新聞にも大きく記事が掲載され、「新聞で見ました!」と声を掛ける人も数え切れないほどだったという。

 ところで、車上の植物は(ガジュマル、アコウ、オオタニワタリなど)、南国から秋田までを駆け抜けても枯れたりしなかったのだろうか。「枯れたものはないですね。逆にアコウは5cmのびました」(知念さん)。「種類も増えました。知らぬ間に、誰かが新しいものをこっそり植えていくんですよ。ローズマリーとか、多肉植物が加わりましたね」(小笠原さん)。
 取材中もチョウなど昆虫がジャングル周辺に現れていたが、ジャングルの中にはアリのコロニーもあるらしい。車上ジャングル生態系は、人間とともに旅を楽しんでいるのかもしれない。

 ジャングルカーはこの日、銀座の目抜き通りから帝国ホテルに乗り付け、その後、国会議事堂を通過して山梨へ向かった。8月28日には大阪から鹿児島行きのフェリーに乗り、29日には鹿児島から那覇へ向けて出発、30日に日本中に幸せを振りまいた旅を終える。

 廃車までにはまだ1年あるそうなので、ジャングルカーに会いたい人は沖縄に行けば遭遇のチャンスはまだあるようだ。(島ライター 有川美紀子)

【関連リンク】
ジャングルカーの旅をリアルタイムで記録したFacebookページ
ジャングル・カー日本縦断計画2015年8月
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