先週から学校も夏休みで、週末の高速道路は渋滞が激しくなっているような気がします。車間距離や速度に注意を払い余裕をもって事故に遭わないようにドライバーの方は注意してお出かけください。

 さて、夏休みといえば、旅行の計画もいろいろあるかと思います。円安での訪日外国人は増加していますが、日本人の海外渡航者は伸び悩み、国内旅行にシフトしているようです。国内旅行なら、旅の交通手段としては車でという方も多いと思います。車にはガソリン等が必要になりますが、最近のガソリン価格は比較的安定しているような気がしませんか? 資源エネルギー庁の調査によると去年の7月は全国平均でガソリン1リットル当たり169円台でしたが、今年の7月では143-145円ぐらいで推移しています。円相場が123-124円台と円安水準に進んだのに、ガソリン価格は下がっていますね。

 その理由は簡単で、原油価格そのもの下がっているからです。去年の夏、代表的なWTI原油価格が1バレル=100ドル以上でしたが、今やその半分の50ドル前後。原油価格の下落が、ある程度円安を相殺した格好になったのです。ガソリン代が安くなると旅行にも出かけやすくなりますね。

 ところで、ガソリン、さらにはエネルギーという点ではエアコンなどに必要な電力も、発電に必要な燃料は輸入原油等に頼っています。原油は日本の国内消費量の99.7%が輸入で、輸入先の約85%が中東産です。(資源エネルギー庁データより)原油を運ぶ手段はタンカーになりますが、タンカー1隻で賄える量はスーパータンカーで約200万バレル(約3億リットル)なので、日本の1日の消費量が約455.1万バレル(BP Statistical Review of World Energy 2014 - Oil:Consumption, 2013調べ)であることを考えれば、相当数のタンカーが必要です。

 現状では中国や新興国の需要の低下など、いくつかの要因で原油価格が下落していますが、重要なタンカー航路でもある南シナ海での船舶の航行に支障が出るような事態が発生すれば、価格が上昇に転じる可能性があります。現在、中東から日本向けのタンカーは、マラッカ海峡を通過し、シンガポール沖を回り込んで南シナ海に出ます。そこに、南沙諸島が存在するので、紛争などでこのルートの航行に支障が出ると、インドネシアの南を通過し、ロンボク海峡を抜けて、ボルネオ島、フィリピン群島の東側を通るルートを採らなければなければなりません。輸送距離が延びる分だけ当然、運送コスト増となり、石油製品などの価格も上昇し、日本でも各方面に大きな影響が出るでしょう。ガソリン価格も上昇するでしょうから、家族旅行どころか節電も心がける必要があるかもしれません。 

 南沙諸島は日本から遠くにあるように思いますが、原油など輸送のことを考えますと、ここでの紛争の行方は日本の経済にも大きな影響を与えます。ガソリンが200円台になり、さらに円安がすすめば、私たちの生活はどうなるでしょうか? はるか南の小さな島々の問題は、地図上の問題ではなく、実は私たちの生活に近い話題なのです。(FXストラテジスト 宗人)