川澄奈穂美(撮影・六川則夫)
川澄奈穂美(撮影・六川則夫)

 こんな幕切れを誰が予想しただろう。7月1日、カナダで開催されている女子W杯準決勝で、日本は前回ドイツ大会で唯一黒星を喫したイングランドと対戦した。前半に両チームともPKで1点ずつを取り合うと、その後は一進一退の膠着状態に。このまま延長戦に突入かと思われたアディショナルタイムの92分、川澄のクロスをバセットがクリアしたものの、ボールはクロスバーを叩いてイングランドゴールに吸い込まれ、土壇場で日本が決勝点をもぎ取った。

 準々決勝のオーストラリア戦と同じスタメン、同じシステムの日本だったが、これまでのような軽快なパス回しができない。フォローの動き出しが遅いため選手間の距離が遠く、1タッチ、2タッチでパスを回せないからだ。「思ったより前回の疲労が重なった」(佐々木監督)ことが原因だった。

 それでも32分、有吉が倒されて得たPKを宮間が確実に決めて日本が先制した。ところが40分、右CKのこぼれ球を競った大儀見のプレーがファウルと判定されPKを献上し、F・ウイリアムズに同点ゴールを許してしまう。イングランドは思ったよりロングボールを多用しない。ターゲットとなるホワイトがベンチスタートだったせいかもしれないが、その代わりにFKやCK、そしてロングスローが大きな武器だった。

 後半はイングランドに押し込まれる時間帯が多かったものの、62分のダガンのボレーシュートはクロスバー、64分のホワイトのシュートもGK海堀がファインセーブで失点しなかったのが大きかった。イングランドは86分までに交代枠を使い切り勝負に出たが、単純なハイクロスは日本も研究済み。岩清水と谷がしっかり対応して決定的なシーンは作らせなかった。

 日本の交代は70分に大野が岩渕と代わっただけ。時間の経過とともに、佐々木監督も延長戦での選手起用を想定していたことだろう。選手だけでなく試合を観戦していたファンの多くもそう思ったに違いない。アディショナルタイムの表示は3分だった。そして残り1分を切ったところで、日本はカウンターを仕掛ける。熊谷が右サイドの川澄に展開すると、川澄は迷うことなくドリブルで攻め上がり、早めにアーリークロスを入れた。

 ボールの先には大儀見が走り込んでいる。DFバセットはインターセプトしようと右足を伸ばしたところ、ボールはクロスバーを叩くと無情にもイングランドゴール内に落下した。川澄の素早い判断と大儀見の執念が実ったオウンゴールでもある。この結果、日本は2大会連続の決勝進出を決め、7月5日(日本時間6日)に連覇をかけてライバルのアメリカと対戦することになった。

サッカージャーナリスト・六川亨)