また、駅を管轄している警察署は、特殊詐欺防止を呼び掛けるステッカーを作製してタクシー会社に配布するなど、「新幹線に乗る前に気づいてもらおう」と心を砕いている。

 警察関係者によれば、「上京とは逆のパターン」にも気を付けてほしいそうだ。「受け子」が新幹線に乗って地方に出向き、駅の構内で詐取金を受け取ってとんぼ返りする。「乗り換えなし」になったからこそ、振り込め詐欺グループも「取りに行く」という申し出がしやすくなった。高齢者が「孫の面倒を見なくては」「足が不自由なので」などと上京を渋った場合、「息子さんに代わって伺います。駅までならすぐでしょう?」と促せば、「何て親切な方」とタクシーを飛ばして最寄り駅までやってくると踏んでいる。やり口は実に巧妙である。

 警察庁のホームページによると、特殊詐欺の被害に遭わないための対策は、

・遠方に住む家族と頻繁に連絡を取る
・家族との合言葉を決めておく
・在宅でも留守番電話にして見知らぬ人からの電話には直接出ない
・家族から電話があった後、かけ直す
・「おかしい」と思ったらすぐ110番通報する
 ……などが紹介されている。

 いずれも有効だと思うが、北陸人がもっとも気を付けたい点は「体裁を繕うことばかりを考えない」という意識かもしれない。「会社の金に手を出した」「金がないと身の破滅だ」などとあおられれば、高齢者は「わが子に恥をかかせてはいけない」との一心で新幹線に飛び乗ってしまうかも……。堅実で勤勉、保守的とされる北陸人にとって、子の保身をちらつかせる振り込め詐欺グループこそ、一番手ごわいかもしれない。

(ライター・若林朋子)