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小泉今日子の「謎」はどこにあるのか(下)

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助川幸逸郎dot.#小泉今日子になる方法

 どうすれば小泉今日子のように、齢とともに魅力を増していけるのか―― その秘密を知ることは、現代を生きる私たちにとって大きな意味があるはず。

 日本文学研究者である助川幸逸郎氏が、現代社会における“小泉今日子”の存在を分析し、今の時代を生きる我々がいかにして“小泉今日子”的に生きるべきかを考察する。

※小泉今日子の「謎」はどこにあるのか(中)よりつづく

*  *  *
 デビュー前の小泉今日子がヤンキーだったことは、かなり早い時期に当人がカミングアウトしています。「Days Japan」1989年2月号の、よしもとばななとの対談で、

「デビューしてからでも、お正月に実家に帰ったりすると、男の子が免許とっててドライブに誘ってくれるのね。道路のわきに暴走族が、チャリンコで来た中学生のツッパリから、竹やりつけた(笑)大人の車までズラーッと並んでて、中学生なんかだと自分がカッコいいと思う車が通ると「イェイッ」とか言ったりしてる。そこへ私も、シャコが低い車に乗せてもらって、よく行ったりした(笑)」

 と語っていたりとか。『パンダのanan』や『原宿百景』といった小泉今日子の著作にも、ヤンキー時代の思い出がさらりと書かれています。

 そういえば、

「若者のメンタリティが、全般的にヤンキー化している」

 そう指摘する声が、最近、しばしば耳に入ってきます(注1)。

 今の20代は、中学時代の仲間との「地元つながり」を、大人になってもいちばん大事にするのだそうです。地方の青年は上京せず、生まれ育った街で就職する。町田や松戸のような、東京の通勤圏にある郊外都市の若者も、都心ではなく地元で余暇を過ごす。お金も、ブランド物の服飾品やスポーツカーなど、見せつけてイバるためのアイテムにはつぎこまず、ボックス型のワゴン車など、仲間と遊ぶときに使えるものに使う。

 若者の雇用が不安定になり、「地元つながり」で相互に助けあう意識が強まったことが、こうした「ヤンキー化」の背景にあると言われています。

 バブルの頃の若者が、仲間から抜きん出て「特別の存在」になることを目指していたのに対し、現代の若者は、仲間とつながることを求めている―― こう書くと、今の若者は精神的にハッピーであるように映りますが、彼らも彼らなりに大変です。つながりをキープしておくために、ラインやSNSでのやりとりにつねに気を配らなければなりません。「仲間がいないこと」を周囲に知られるのは大きな屈辱なので、一緒にランチを食べる友だちを見つけられない場合、こっそりトイレの個室で弁当を食べたりする学生もいます。

 小泉今日子は、共演者と飲みに行くなど、仲間とのコミュニケーションは大切にしている様子です。かといって、それに振りまわされている印象はありません。現在の小泉今日子のライフスタイルは、ヤンキー的な「仲間とのつながりが最優先」という価値観だけでは説明しつくせないのです。


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