またノーベル賞作家ラドヤード・キプリングによる『ジャングル・ブック』。ディズニーによりアニメ化もされており、むしろこちらのほうが有名かもしれないが、この舞台もアフリカではなくインドである。ちなみにこの「ジャングル」という言葉は「原生林」を意味するヒンディー語だ。

 そもそも日本語の基本ともいえる「あいうえお」で始まる五十音、すでにこれ自体、インドが発祥であるという説もある。平安時代、円仁ら多くの僧侶が中国に渡りお経を手に入れてきたとき、お経(すなわちサンスクリット語)を読むため一緒に持ち込まれた発音表が、五十音表の元となったというのだ。実際、ヒンディー語の辞書を開いてみるとわかるのだが、「あいうえお、かきくけこ……」と日本語の五十音表と酷似しているのである。

 逆に日本からインドに渡りヒンディー語化した言葉もある。それが「リクシャー」だ。

 明治時代に日本から外国に盛んに輸出されたもののひとつが「人力車」。当時の人力車は派手にデコレーションされたものが人気を博していたそうで、その名残なのかインドを走るリクシャーには派手なペイントが施されているものが少なくない。

 日本ではモータリゼーション時代の到来とともにほとんど姿を消してしまったが、インドでは自転車と合体したサイクルリクシャー、原動機を付けたオートリクシャーへと独自の進歩を遂げて現在に至る。今日もインドの街角で「ヘイ! リクシャー!」と連呼されているのである。