7月21日投開票の参議院選挙について、朝日新聞社が7月4、5日に全国の有権者を対象に実施した電話による情勢調査と取材で得た情報によると、自民党は公明党と合わせて与党で参院の過半数を確保する勢いだと言う。

 投票前に行われる獲得議席の推計や内閣支持率など、世の動向を知るために欠かせない「情勢調査」や「世論調査」。この結果に対し、「本当に正確な数字なのか」と違和感を覚えたことはないだろうか。日本のマスメディアが通常の場合に行うのは電話での世論調査のため、固定電話を使用する世代は限られているのではと疑問を持つのも無理はない。

 しかし、ニュース番組や新聞の解説者として活躍するジャーナリストの池上彰氏は、「とにかくマスコミの行う世論調査というのは漫然と電話をしているだけではありませんし、自分たちの都合のいいように調査データを曲げるようなことはしていない」と著書『池上彰の政治の学校』の中で述べている。

 そもそも世論調査とは、きちんと統計理論に基づいた調査方法だ。では、実際にどんな方法で調査を行っているのか。池上氏は本書で「本当の正確な世論調査をしようと思えば、全国の有権者の住民台帳を基に無作為抽出をして、アンケートを行う必要があります。けれどもそれは、とても手間がかかります」とした上で、電話を使用した世論調査の対象が偏らないようにする工夫をこう説明する。

 コンピュータで自動的に電話番号を発生させ、偏りが出ないように市外局番ごとに電話をする人数を決めていく。すると、どこかで個人が電話に出る。ここで電話口に出てくるのは老人か主婦の可能性が高いのは確かだ。その人にだけアンケートをとると、調査に偏りが出てしまう。

 そこで、「まず家族の人数を聞きます。たとえば5人と答えたら、その5人に対して乱数を使って、一つの数字を発生させる。これが4と出たとすると、『あなたのご家族のうち、年齢が4番目の方はどなたですか。その方はいらっしゃいますか』と聞く」。

 その人に電話を代わってもらい、もしいなければ帰宅時間に再度電話をかける。こうして全体が一定の数になるまで調査をする…という方法により、「かなり正確な世論を掴むことができる」と池上氏。

 政治全体に大きな影響を与える世論。調査の仕組みがわかれば、夏の選挙はもっと身近に感じられるだろう。