ロイター通信によれば、4月26日のアジア通貨市場にて、人民元の対米ドル基準値の最高値更新が引き金となり、新興国通貨は全体的に跳ね上がった。近年、香港上海銀行などの海外資本の銀行に人民元預金する人が増えていると話題になっているが、最近では日本の地方銀行でも人民元預金をとりあつかっているところは少なくない。中国経済の発展は、通貨・為替の面でも如実に頭角を現し続けている。

 こうした発展を遂げていく国は日本をはじめ過去にも存在したが、第二次世界大戦後にブレトンウッズ体制が確立されて以来、世界の基軸通貨はドルであり続けている。ドル本位制で形成されてきたこの形態が、崩れることはあるのだろうか。

 日本銀行でアドバイザー、官邸の諮問機関であるアジア・ゲートウェイ戦略会議で座長代理を務めている中北徹氏によれば、“米ドルが現在の基軸通貨の地位を保ち続けることができるかどうかは、対抗できる通貨が存在するかどうかに関わる”という。しかし、ドルをけん制し、対抗できる通貨は今現在、見当たらないそうだ。

 一番の有力候補はユーロだが、西欧諸国では統一通貨によって経済、金融政策が統合されていてもユーロ地域の財政運営は各国に任されており、財政は統合されていない。しかも、大きな経済格差が域内に存在する。そのため、財政運営の面で規律が緩んだ状態が放置されてしまっており、これがユーロの課題となっている。

 「ギリシア国債のように、国債の返済リスクが増大すると、それを大量に保有していた域内の銀行がバランスシートを悪化させて、結局、ユーロ建ての信用が悪化して不良債権化するという、いわば財政と金融の悪化が同時に進行するというリスクが内在している。このような場合に備えて、均衡監督機能を厳格化する必要があるが、ユーロ諸国の場合、それらの機構(組織)は各国の裁量に委ねられており、統一化されていないのが現状だ」(中北氏)

 米ドルに対抗して導入されたユーロも、課題の多さから、基軸通貨になるにはまだ難しいことがわかる。また、気になる日本の円や人民元だが、これは東アジア地域の統合がどこまで進むかという事情が大きく関わってくるという。日中韓を取り巻く政治情勢が改善されないかぎり、アジアの通貨が基軸になる日は遠そうだ。