サムスンの素晴らしい福利厚生

 こうして私は韓国に引っ越し、サムスンで働くことになった。ここからは少し社内外の環境について述べたいと思う。

 サムスンは韓国を代表する大企業なだけのことはあり、基本的にはほぼあらゆる面で日本の会社と同等以上のサービスが用意されている。韓国人社員がつくるサムスンの企業文化は、日本の会社にとてもよく似ている部分もあるが、日本では見かけない、ユニークな面もいろいろあった。

 例えば福利厚生。私の前職の会社との比較しかできないが、福利厚生で利用できるカフェテリアポイントは日本企業と同じようにいろいろと利用でき、契約している宿泊施設や遊興施設も数多い。また、通販にも利用できるので、家庭を持っている社員には好評のようだ。

 また、特筆すべきは年1回の健康診断である。サムスン系列の病院で行うのだが、まるでホテルのように豪華だ。検診には最新鋭の装置を使い、診断後2週間以内には結果が送付されてくる。サムスンの健康診断はどんな小さな異変も見逃さないと、韓国内でも定評があるらしい。特に胃腸の内視鏡検査はすばらしく、睡眠薬で眠っている間に全て完了する。これは是非日本でも普及してほしいと切に思う。

 また、社内食堂ではバラエティーに富んだ食事が1日3回無償で提供される。サムスンには労働組合がないのだが(※類似の働きをする組織はあるが、組合ではない)、他にも、誕生日や結婚記念日には会社からプレゼントがもらえるほか、運動会や文化イベント、夕食会など飽きが来ないようにイベントが目白押しだ(※コロナ前)。

 面白いのは、文在寅政権になってから週40時間労働制が推進されたおかげで、勤務時間が明らかに短くなったことだ。それまでは土曜日にも当たり前のように出勤していたのだがその習慣もなくなり、無意味な残業が激減したように思う。サムスンのトップはいろいろな罪で頻繁に収監されていたが、会社は国のお手本になろうと努力しているように見えた。

 しかしこれだけ恵まれた環境でも、起業や進学といった理由でサムスンを去る韓国人社員は多かった。彼らの上昇志向には感服する。

次のページ
やりすぎ感のある社内情報セキュリティー