■東京へ転入する人の年齢の推移と理由

 都区部に転入する年齢で一番多いのは23歳だ。30年ほど前は19歳が一番多かった。

 バブル経済の頃は、大学生になったら親が仕送りを送ってくれた。しかし、今は親の財力はそこまでない。奨学金をもらう学生もかなり増えた。特に一人っ子以外は、学生として東京へ行かせるのは経済的なハードルが高い。

  一方で大学はすでに全入時代となっている。志望校を選ばなければどこかには入れるので、実家から通える大学への入学が増えた。学生としてではなく、就職を機に東京に出てくるケースが増えたのだ。

 そのため、東京への流入人口は「有効求人倍率」に比例して決まる。

 有効求人倍率は、全国平均よりも東京のほうが常に高く、その分、失業率は低い。仕事が東京にあるからこそ、人が集まってくるのだ。給料をもらえれば、そこで暮らすこともできる。そこが社会人と学生の大きく異なる点だ。

 大卒の比率が50%を超え、ホワイトカラーの就職先としての大企業は東京に一極集中しており、金融やITや広告などの主要産業が集積していることから、今後も人の流れは変わらないだろう。そして単身の人が増えると、都心寄りの23区内に住む傾向が顕著になる。

■東京の人口はいつまで増え続けるか?

 日本の総人口が減少し始めてすでに10年以上経過した。しかし東京都の人口は増加し続けている。そして今後も、東京への人口集中は続くだろう。国立社会保障人口問題研究所の予測では、東京都の総人口は2030年まで増えると予測されている。

 2020年だけを見ると、コロナ禍においては「想定以下でしか増えなかった」ことは確かだ。しかし今後、国立社会保障人口問題研究所の予測よりも東京都の総人口は多くなることは確実となる。なぜなら、この予測の対象外であった外国人の流入が急速に増えているからである。

 在留資格を持つ外国人の流入の急増は、2013年以降、顕著である。実際、日本はすでに先進国の中で、ドイツ、アメリカ、イギリスに次ぐ4番目の移民大国となっている。これが取り沙汰されないのは、移民の定義が国連では「出生地以外で1年以上居住した人」であるが、日本では「永住権を持つ人」と違うためで、世論を操作する形で外国人は増え続けているのだ。

 その証拠に、コンビニの店員に外国人が増えていることはみんな気づいていることだ。コロナ禍によって外国人の在留資格人口は減少し始めているが、これもワクチンの普及で解決することを想定すると、いずれ元の状態に戻ることになる。こうなると、東京都の総人口は2040年でも増え続けることになる。

 これに加えて、東京都の世帯数はもっと増える。1世帯当たりの人員は戦後一貫して減っているからである。たとえ東京都の総人口が減り始めても、世帯数が減り始めるのはその約10年後になる。つまり、東京都の世帯数は2050年まで増える。現在からあと30年は、世帯が住む家を増やし続ける必要があるのだ。
 
■新型コロナの影響で浮かぶ街、沈む街

 コロナ禍で人々の働き方が変わった。リモートワークが増えたことで、オフィスではなく自宅で仕事する人が増えた。大学はオンライン授業を整備してキャンパスを閉鎖状態にしたため、実家に戻る学生も多数出た。こうして、都心を離れて広い家に住む人が増えた。

 結果的に、転入超過人口が前年比で改善した市区町村は図表1のような順位になる。

 1位は栃木県小山市で、断トツのトップである。転出者数が減少したことが最大の要因である。3位の岐阜県羽島市など、ほとんどがこのパターンになる。

 2位は東京都江東区で、その理由は大規模な分譲マンションが竣工したことなどの流入に支えられている。同様に7位の横浜市中区もマンションの竣工が起因しているが、都市部ではこのようなケースは非常に少ない。

 一方、転入超過人口が減った市区町村の1位は世田谷区で、若者の流入の多いエリアゆえに、転入が減ることのダメージも大きくなる。2位の大田区、3位の練馬区も同じ理由で、都区部に最初に引っ越して来る「エントリーエリア」が並ぶ。トップ10のうち、9区が東京23区であり、東京一人負けの様相は明確だ。

 都区部以外では、川崎市幸区(川崎駅の北側にある区)がランクインしている。都区部に接している市区町村はこのパターンになりやすく、神奈川県では都区部に隣接している川崎市が大きく減っているのに対して、もう少し離れている横浜市は増えていたりする。

 都心に近いエリアほど2020年は受難な年だったといえよう。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)