●「お客さまのお客さま」を気遣う緩衝材

 3枚目の写真は、秘書の女性に贈るために、三越伊勢丹で購入したプレゼントが届いたときの写真です。箱を開けてみると、バスオイルのセットが緩衝材にくるまれて入っていました。緩衝材をはがすと、リボンがつけられています。

 壊れやすい商品だから緩衝材を巻く。プレゼントだからリボンをつける。伝統と格式のある百貨店、きちんとしています。とはいえ、これは多くのお店でやっていることでしょう。少なくとも、この時点で私は、特に驚きを感じたりはしませんでした。 

 ところが、届いた箱の中をよく見ると、もうひとつ緩衝材が巻かれたものがあります。商品を入れるための「手提げ袋」でした。商品と一緒に紙袋を送ってくるのは、どこのお店でもやっていることですよね。袋が折れ曲がらないように配慮しているお店もあります。しかし、手提げ袋までを「プチプチ」でくるんでいるお店は初めてでした。

 袋も新品同様の状態でお渡しできるように。そんな心遣いだったのでしょう。

【手提げ袋をくるんだ「プチプチ」に込められた意味……商品を入れる手提げ袋も、新品同様でプレゼントできるように】

 さらに、同梱されていた商品パンフレットの冊子を手にとって、「えっ?」と驚きました。そのパンフレットには付せんがついていて、こんなことが書かれていたのです。

「価格の記載がございますが、よろしければお納めくださいませ」

 バスオイルをプレゼントされたら、香りや効能など、商品の詳しい情報を知りたい人が多いのでしょう。だから担当の方は、それらが記されたパンフレットもプレゼントと一緒に手渡してほしい、と考えたのだと思います。けれど、パンフレットには商品の価格も記載されています。もし私が中身を確認しないまま無造作に渡してしまったら、相手にプレゼントの値段がわかってしまいます。

 プレゼントの場合、高くても安くても、値段はあまり知られたくないものです。この担当の方は、そこまで想像して、コメントをつけてきてくれたのでしょう。しかも、【写真6】を見てください。それは、手書きで記されていたのです。

 商品を包装しながら、男性から女性へのプレゼントであることを意識し、お客さまの思いに寄り添う。何も考えず事務的に送るのではなく、メモを書く手間も惜しまない。私は当事者として、誠意ある対応に心を打たれたました。

【パンフレットと付せんに込められた意味】
(1)商品の詳しい情報を伝えるため
(2)プレゼントの価格が相手に伝わることへの「アラート」

 普通に商品だけを緩衝材でくるんで、普通にパンフレットを送ってきていても、不満を感じることはなかったと思います。

 ただ、逆にいうと、プレゼントを渡して、それで終わりです。特に印象に残ることなく、どのお店で買ったのかも忘れてしまったかもしれません。

 しかし、このお店は違いました。担当の方の独自の判断なのか、お店のマニュアルなのかはわかりませんが、どちらにせよ、「三越伊勢丹はすごい」という印象が、強烈に残りました。 

 私がもう一人のアシスタントに誕生日プレゼントを送るときも、三越伊勢丹にお願いしたのは、言うまでもありません。

●「身体を冷やさない」を徹底する小さな毛布

 4枚目の写真は、東京・品川にある「ゆらしラボ」という治療院で撮ったものです。

 数年前の冬、私はぎっくり腰で腰を痛め、治療院を探していました。整形外科、マッサージ、接骨院など、あちこち行ってみましたが、どうにも良くなりません。

 そんなときにインターネットで見つけたのが、この「ゆらしラボ」でした。ここで行う「ゆらし療法」は、器具や薬を一切使わず手技だけで痛みの原因を取り除くもので、医療先進国ドイツの医師も認め、海外でも広まっている療法だといいます。痛いことが大の苦手な私は、わらにもすがる思いで訪ねました。

 すると、軽く触って動かす、柔らかくなでる、やさしく引っ張るという、まさに、一切痛いことをしない「ゆらす」だけの治療で、本当に痛みがなくなったのです。

「痛いことをしないでゆらしただけで治るなんて! ありがとうございました!」

 そう感謝の気持ちを伝えると、院長さんは、こう説明してくれました。

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