「痛みの原因が炎症にあると考え、患部をアイシングする方が多いのですが、それは大きな誤解なんです。冷凍庫にお肉を入れているのと同じで、長く冷やしすぎると筋肉が固くなって血行を悪くさせてしまいます。そうではなく、軽くなでたり、触ったりして、硬くなった筋肉を温めて、患部の血行を良くすることが大切なんです」

 私は学生時代にサッカーをやっていた頃から、どこか痛くなると、冷やせばいいと思っていましたが、痛みを麻痺させるだけで、症状が治るわけではなかったのです。

 新しい感覚に感激して帰ろうとしたとき、私は「えっ?」と驚きました。靴を履こうとしたら、なぜか靴が温かいのです。
「なぜ温かいんですか?」と聞くと、「お預かりした靴を温めているんです」とのこと。
「どうやって?」と聞いて見せてもらったのが、写真の光景でした。

 下駄箱の靴に小さな毛布のようなものがかけられていて、下に敷かれている小さなカーペットを触らせてもらうと、じんわり温かい。小さな電気カーペットの上に靴を置き、その上から毛布をかけていたのです。

【靴にかかった毛布に込められた意味……せっかく温まった身体を冷やさないように。】

 私が驚いていると、「どうぞ、これをお使いください」と、これまで見たことのない、ちょっと変わった靴べらを渡されました。

【写真7】をご覧ください。柄の部分に、ちょんと出っ張っている部分がありますよね。この出っ張りは何だと思いますか。話を聞いて、また私は「へえ!」と声を出してしまいました。

 靴べらを使うと、ズボンのが靴の中に入ってしまうことがありますよね。それを直そうとすると、腰を曲げなくてはいけません。腰痛の人にとって、腰を曲げることはつらいものです。それを防ぐため、出っ張りに裾を引っ掛け、ズボンの裾が靴に入らないように作られた特別な靴べらだったのです。

【不思議な形をした靴べらに込められた意味……腰痛を持つ人が、腰を曲げなくても靴が履けるように】

●受け取る人の気持ちを考えたお礼状

 最後の5枚目の写真は、ヴェリタス・インベストメントという不動産会社の経営者、川田秀樹さんという社長からいただいた、お礼状を撮ったものです。この方は私のお客さまで、毎年、この会社の新人研修の講師も務めさせていただいています。とてもお世話になっているため、会社が移転したときに花をお贈りしました。

 すると、お礼状に、贈った花の写真が添えられてきたのです。ただお礼状が届くよりも、「こんな素敵なお花が届きました。ありがとうございます」と言われている気がして、相手の気持ちが、より伝わってきます。

 それだけではありません。会社の移転などで贈るお花を発注するとき、どんな花が贈られるのか、実物を見ることはほとんどないのではないでしょうか。最近は、ネットで見本だけを見て注文することも多くなっています。

 そんな中、こうした気配りは、贈った側からすると「あの花屋さんに頼むとこんな花が届くんだな」と、確認できることにもなるわけです。

【お礼状の写真に込められた意味】
(1)「ありがとう」を言葉以外で伝えたいという思い
(2)「こんなお花が届きましたよ」という報告

 相手の気持ちを察して、その人が求めていることや、喜んでくれることを想像し、実行に移す。これは、どんなビジネスでも大事なことです。私自身もいつも心がけていることですが、なかなかここまで徹底できません。

 この川田社長は、相手目線で物事を考えることの大切さを、従業員への教育でも徹底されています。

 ビルの廊下で来客とすれ違ったときの対応から、トイレの案内の仕方まで、社長自ら新人一人ひとりに、その場でロールプレイングしながら指導されているそうです。

 私は、経営者自らがお客さまの目線を持ち、行動することは、その企業の文化をつくるうえで一番大切なことだと思っています。お礼状ひとつ取ってみても、その人や、その会社が大事にしていることは、相手に伝わるものなのです。

 さて、ここまで紹介した5つの事例について、あなたはどう思われたでしょうか?

「わかる! すごい!」と感心されたでしょうか。
「えっ、そんなことまでするの……」と驚かれたでしょうか。
「なんで、こんなことをするの?」と、疑問に思われた方もいるかもしれません。

 いずれにしても、「普通じゃない」と感じたのではないでしょうか。

 実は、5つの事例には、隠された共通点があります。その共通点とは、お客さまに対してサービスを提供するすべての仕事に通じる、「リピート」や「紹介」を生む法則です

 あなたのお客さまに、「また行きたい」「あなたから買いたい」と思ってもらうために、あなたが今日から実践できる、ほんの少しの心がけです。

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売れるか、売れないかは「商品の差」ではない