元来、私はオセッカイですから、デザインでも、ライフスタイルでも、自然環境でも、不満を感じたら、しゃしゃり出ます。その割には、実現できたことはわずかです。


 バブル崩壊後、進んでいた17のプロジェクトが、すべて立ち消えになったこともありました。

 コンペで首席を勝ち得た事業計画も、すべてゼロ。ハワイのアラモアナセンターの裏にあたる「ケアモク・スーパーブロック」は、すばらしいコンプレックス開発(複合施設の開発)ができたはずですが、今ではウォルマートになってしまい、ホノルルに行くたびに、残念に思います。

 パリでも、アラスカでも、カリフォルニアでも、ワイオミングでも、上海でも、香港でも、会社をつくったことがあります。

 いずれの場合も想いばかりが先走って、自分の経営力、言葉の表現力に限界を感じては引き、また夢を見ることを続けてきました。

 結果的に「実現しなかったプロジェクト」は星の数ほどありますが、それでも私は自分が「失敗した」とは思っていません。

 想いが先走っているとはいえ、思いつきだけでプレゼンテーションしているわけではないからです。

 私たちは、「フィジビリティ・スタディ(feasibility study/プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること)」を堅実に行い、「事業として十分に成立する」という判断のうえでプロジェクトの提案をしています。

 ですから、プレゼンテーションが通らなくても、それは「相手が乗ってこなかった」「ファンドが集まらなかった」だけのこと。

 私は、「失敗した」のではなく、「たまたま実現しなかっただけ」と解釈しています。

「危ない」「心配だ」と、何もしないでぬるま湯に浸かっていると、一生、白けっぱなしで終わってしまいます。

 だから、とにかく、やってみる。「こうしたい」という強いヴィジョンがあるのなら…、怖れずに声に出してみる。何度失敗しても、実現するまで積極的に試行錯誤する。

 山のような失敗の中にだけ、一粒の大きな成果が残るのだと私は思います。

 大量の失敗を覚悟の上で、それでもやってみる。
「やってみて、失敗して、やり方を変えてやってみて……」の繰り返しの中でしか、実現できないことがあるのです。