著者 太田寿(おおた・ひさし)1970年、島根県生まれ。名古屋大学理学部分子生物学科卒業。代々木アニメーション学院卒業。映像制作の仕事を経て、イラスト・マンガを手掛ける。日本の戦国時代を中心とした歴史の話題を好み、城跡を愛する2児の父親。月刊誌などに連載マンガ多数。歴史マンガは英語、ポルトガル語にも翻訳されている
著者 太田寿(おおた・ひさし)
1970年、島根県生まれ。名古屋大学理学部分子生物学科卒業。代々木アニメーション学院卒業。映像制作の仕事を経て、イラスト・マンガを手掛ける。日本の戦国時代を中心とした歴史の話題を好み、城跡を愛する2児の父親。月刊誌などに連載マンガ多数。歴史マンガは英語、ポルトガル語にも翻訳されている
『マンガ 歴史人物に学ぶ 大人になるまでに身につけたい大切な心 1』(1万年堂出版)原作・監修 木村耕一(きむら・こういち)1959年、富山県生まれ。富山大学人文学部中退。東京都在住。エッセイスト。著書に、新装版『親のこころ』、『親のこころ 2』、『親のこころ 3』、新装版『こころの道』、新装版『こころの朝』、新装版『思いやりのこころ』、『まっすぐな生き方』などがある
『マンガ 歴史人物に学ぶ 大人になるまでに身につけたい大切な心 1』(1万年堂出版)
原作・監修 木村耕一(きむら・こういち)
1959年、富山県生まれ。富山大学人文学部中退。東京都在住。エッセイスト。著書に、新装版『親のこころ』、『親のこころ 2』、『親のこころ 3』、新装版『こころの道』、新装版『こころの朝』、新装版『思いやりのこころ』、『まっすぐな生き方』などがある

 初めての道徳学習マンガとして『マンガ 歴史人物に学ぶ 大人になるまでに身につけたい大切な心 1』(1万年堂出版)が発行され、多くの小学生や保護者などから人気を集めている。歴史人物のエピソードから、約束や努力、優しさ、思いやり、友情、信用など、子どもによい習慣を身につけさせたい大切な心をマンガで学ぶことができる。

 この本では、ベーブ・ルース、豊臣秀吉、徳川秀忠、富山のくすり屋さん、エイブラハム・リンカーン、諸葛孔明、上杉謙信、ヘンリー・フォード、韓信、江戸の大根売りの10人を取り上げ、それぞれ「人物紹介」「マンガ」「大切な心」「ものしりアルバム」という四つの項目で構成されている。

 「歴史人物の本は、一人の人物で1冊が基本でしょう。そうすると、当然ながら分量(ページ数)が多くなってしまいます。ところが、この本は、一人の人物を10~18ページのほどよい分量で紹介しています。各人物のページボリュームと内容のバランスも重視しました」という著者の太田寿さんに話を聞いた。

■親しめるアニメ的マンガ

 木村耕一さんの原作をもとに、子どもにもわかりやすい内容のものを見やすく、読みやすく、コンパクトなマンガにしたという。本の初めからではなくても、興味・関心をもった人物から読め、各人物の特徴がすぐにわかる手軽さもある。歴史ものや人物のマンガは数多く出版されているが、それらは学校の勉強の延長で、歴史を学ぶための教科書的なものであろう。しかし、この本の内容は多少異なり、より踏み込んだものになっている。紹介する人物を通して、努力の大切さ、約束を守ることの大切さ、困っている人には親切にすることの大切さなどの道徳心を知ることが一番のテーマなのだ。

 最近の学習歴史マンガは、キラキラ系が多くなってきている傾向がある。歴史人物が皆、現代のイケメンになっていたり、萌(も)え系の可愛らしい女の子になっていたりする。流行(はやり)ということもあり、子どもは手に取るが、その後、肖像画や写真などを見てがっかりすることがあるという。子どもに受けるからという理由でイケメン風・萌え風の絵柄にしてしまうと、過度な演出になりがちで、伝わるものも伝わらないような、歴史を変えてしまうような部分もあるのではないだろうか。かといって、写実的、劇画風にすると、子どもは読まなくなるであろう。その中間の位置で、子どもが親しめるようなアニメ的なマンガを心掛けたという。

■幅広い年代の人たちに

 マンガでよくありがちなのは、その人物の顔が多く描かれ過ぎていて「いつ、どこで」ということがわかりづらい場合がある。しかし、この本では引きの絵、つまり背景・風景などもしっかりと描かれていて、その世界に入っていきやすいのだ。そして、人物を通した歴史的な出来事を知ることだけではなく、その出来事から何をどのように学ぶのか。学ぶことは歴史にあり、歴史人物が生きる道を示してくれている。この本の最も伝えたいことである。

 早くも、小学校の図書室や学級文庫にも置かれ、副読本として道徳の授業にも使われ始めている。子どもだけでなく大人も含め、親子で一緒に読みたい歴史と道徳心がわかる本。よい心掛けと習慣が身につけば、生涯の宝にもなる。一部の世代向けだけではなく、幅広い年代の人たちに受け入れられるに違いない。親から子へ、祖父母から孫への贈り物としても最適であろう。(朝日新聞デジタル &M編集部 加賀見 徹)

『sesame』2016年11月号(2016年10月7日発売)より
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18491