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第37回 毎日をちょっとだけ楽しくするモノヅクリ

文・鈴木正晴

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先日行われた、優れたハンドメイド商品を表彰する賞の授賞式にて。左が筆者、右が「鈴木正晴賞」受賞のサカガミさん

先日行われた、優れたハンドメイド商品を表彰する賞の授賞式にて。左が筆者、右が「鈴木正晴賞」受賞のサカガミさん

受賞作品の「のらぴか」がピカピカ光っています

受賞作品の「のらぴか」がピカピカ光っています

のらぴか 刻-koku-

のらぴか 刻-koku-

 国全体の「地方創生」に向けた動きもあり、2010年に日本百貨店ができたころと比べると、本当にたくさんの方々が日本のモノヅクリに興味を持ってくれていると実感しています。全国の様々な場所で、新しいお店や、モノヅクリに関わるイベントが開かれるようになりました。優れたモノヅクリを表彰して、サポートしていこうという動きも各所で見られます。モノヅクリにお金が回る仕組みというものが出来上がりつつあるようです。

 今回ご紹介したい商品は、先日審査員を務めさせていただいた、創意工夫を凝らした優れたハンドメイド商品を発掘・表彰する賞のノミネート作品の一つ、「のらぴか」です。見るなり一目ぼれ。100もある素晴らしいノミネート作品の中で、ひときわ輝いていたのがのらぴかでした。

 モノヅクリというと伝統工芸品や和菓子など、何となく「手作り感」が目に見えるモノが思い浮かぶのですが、のらぴかは「メカ」です。

 のらぴかを作ったのが、ロボット工房のらとりえのサカガミさん。なんと現役ロボットエンジニア!

 たとえば、車のウィンカーの「カッチンカッチン」という音の響き。刑事モノのテレビドラマに出てくる、3、2、1……と数字が減っていく時限爆弾のタイマー。様々な色に輝くクリスマスツリーの電飾。そういった、ちょっとしたメカへのあこがれを形にしたのが、のらぴか、名付けて「電子箱庭」です。

 たとえば、「のらぴか 刻-koku-」は、時限爆弾風キッチンタイマー。

 「ピッ……ピッ……ピッ……」

 タイムリミットの瞬間に何かが起こるような気がしてしまう、緊張感のあるカウントをするタイマーです。

 全部で四つの機能があります。キッチンタイマーモード。ストップウォッチモード。プッシュカウントモード。表示作成(暇つぶし)モード。……そうなんです。はっきり言うと、どうでもいいんです、この商品。

 雑貨のモノヅクリに大切なのは、こんなものがいいんじゃないか、みんなほしがるんじゃないか、作ってみたいなと感じる感性、それを具現化するためのアイデアと技術、失敗しても前を見て進む前向きな粘り強さ、そして、ちょっとだけ毎日を楽しくしちゃうようなウィットや、使う人が便利だと感じてくれるようにという思いやりだと思っています。最後のスパイスであるウィットや思いやり。このさじ加減が本当に大切です。

 のらぴかは、あってもなくても困らないし、機能だけならもっとイイモノもあるでしょう。だけど、一度手にすると、なくなるとちょっとだけ寂しい。あることで、少しだけ毎日が楽しくなっている。そんな作品なのだと思います。


(更新 2016/4/ 6 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)