電子書籍の原稿料の支払い形態にはいろいろあるけれど、割と多いのが「売れた分だけ払い」というものだ。

 紙の書籍の場合、最初に刷った部数の分は印税として支払ってくれる。一種の保証給のようなものだ。けれど電子書籍ではその保証部分がなく、1冊も売れなかったら、著者には1円も入らないという恐ろしい仕組みを導入しているところが少なくないのだ。

 すでに書いた本の再販ならばいいかなとも思えるのだけれど、書き下ろしの作品だった場合、これは相当な賭けである。何しろ完全実力制なのだから。
 私が受けている仕事の一部もこの完全歩合制で、しかも書き下ろしなので、リリースされるたびに、どうか売れますようにと祈るような気持ちになる。

 でもこの電子書籍のシステムは、逆に、本を出してみたいと思う著者予備軍にとっては、とてもありがたいはずだ。
 なぜなら、出版手数料も、完全歩合制だから。1冊売れるごとに本の価格の○%(サイトによってレートはいろいろ)が売上から差し引かれるというシステムなのだ。
 つまり、今まで本を出したいと思ったら、何十万円も払って自費出版をするしかなかったのだけれど、電子出版だったら本が実際に売れるまで1円もかからない場合もあるということなのだ。

 ということでバカ親の私は早速、娘がiPadで描いた画集を、日本の電子書籍サイトを通じてkoboにアップしてみた。これで娘は小学6年生にして書籍の著者である。
 私がその年の頃は、地元の童話教室に通っており、作品はわら半紙に刷られて教室の参加者に配られ、読者は生徒数十人のみだったのに、娘の目の前にはもっともっと大きな人数がいる。これはすごいチャンスだ。ただし、誰かが作品を目に留めて、気に入ってくれたら、だけど。
 でも、なんて夢のある話だろう。

 まだ日本のkoboストアにアップしただけなので、海外にも娘の作品が配信できるわけではなさそうだけど、将来は充分可能性はある。
 とはいえ今回は、電子書籍端末がカラーではなくモノクロでの表示になってしまうということもあり、0円、つまり無料で配信している。

 今のところ何人にダウンロードされたかはわからないけれど、娘が印税生活ができるまでには、彼女の実力も含め、まだしばらくかかりそうだ。